「…まだ、やってる。」
「元気だなぁ…」
会社からの帰り道。いつものように、
音駒高校の前を通って、帰る。
そして、
「……お、コンニチハ。奈々さん」
「こんにちは。黒尾くん」
二つ年下の彼と、他愛もない話をする。
「んで、そっから研磨が________」
「ふふ、それは災難だったね。」
__彼は、いつも部活の後輩のこととか、幼馴染のこととか、バレーのこととかの話をする。
「そんで_________」
彼は、いつも優しく話してくれて、会社からの帰り道、嫌なことがあっても彼が忘れさせてくれて。
親戚でも、家族でもないのに、何故だか私は、彼のことをとても大切に想っていて。
彼がいるから、会社の帰りがとっても、とっても楽しみで。
私がバレー部を覗いている時、彼が話しかけてくれてから、
彼は私の中で、「かけがえのない人」になっていた。
「それじゃあ、奈々さん美人なんでナンパに気をつけて。さよなら。」
「ふふ、ありがとう。さよなら。」
どうして、最近知り合ったばかりの私に優しくしてくれるのか、こんな風に話してくれるのか、
彼のことで、わからないことはたくさんある。
けど、そんなことどうでもよくて、
それよりも、
彼に会うのが毎日の日課だった。
そして、毎日の楽しみだった。
これは、そんな私と彼の複雑な
恋の関係を描く、物語。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。