第46話

届け
151
2023/04/02 04:52
しばらく待っても、雪は現れなかった。
もう一度チャイムを鳴らしても、反応は無い。
意を決して電話をかけてみたけれど、それも不通だった。

……なんとなく、嫌な予感がした。
雪……。どこ……?
そのままで居られなくなった私は、
ふらふらと歩き出した。

雪の行くあてなんて分からなかった。
……と言うより、この時冷静さを欠いていた私は、立ち止まって考えることもできていなかった。

だから、闇雲に探した。
きっと怪しい女だっただろうな。
スーツ姿にパンプス、疲れた顔で学生で溢れる街を歩き回って雪を探していた。

何でもいい。手がかりが欲しい。
大学の近くまで行ってみたり、居酒屋が立ち並ぶ中をキョロキョロしながら進んだり。

色々な人に声をかけられた気がする。
ナンパとか、居酒屋のキャッチとか。
でも、彼らの声なんて耳に入らなくて、無視してただ足を進めた。

……でも、居なかった。
彼の面影はどこにもなくて、不安だけが募った。
……。もう、会えないのかな。
靴擦れで踵が痛い。
近くの公園のベンチに座って、コンビニで買った絆創膏を貼った。

……送ったLINEに既読はつかない。

もう終わりなのかな。
何も伝えられないまま、謝ることもできずに。
これも罰なのかもしれない。

諦めかけた時、スマホの通知が鳴った。
……!
雪のチャンネルの通知だった。
急いで開くと、1分の短い動画が上がっている。

……新曲?
鞄を漁ってイヤホンを取り出すと、震える指でタップする。
(ぅっ……耳が、痛い。)
なんとも形容し難い音だった。
音楽かどうかすら怪しい。

この感情は何?
孤独、絶望、失望……
混沌とした負の感情が絡み合って流れ込んでくる。

……どうして、今これを?
曲名はなかった。でも、概要欄にぽつりと書いてあった一言に、私は立ち上がった。
あの日の電車で全てを終わらせる。
どうして、思い出せなかったんだろう。
再会の日に雪が言ってたじゃないか。
あそこ、街が一望できるんだよ。
俺が初めて曲を書いたのが学校の屋上だったんだ。星の綺麗な夜だったな。
だからそういう場所でなら書けるかなって思って。

景色を見て、何度も何度も曲を作ろうとしたけど……やっぱりだめだった。

……結局何も変わらないまま最終電車を見届けて、それで一日が終わるんだ。
そうだ……!あのビルの屋上……!
雪のしようとしていることが、分かった。
その瞬間に走り出す。

時計を見る。終電まであと少し。
間に合え。間に合え。間に合え。

私の馬鹿。結局何も分かってなかったじゃない。

足が痛い。何度も転びそうになりながら、
ただ走った。君のもとへ、お願い。届けて。

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