第44話

夢を読む
223
2023/03/17 18:31
目を開けても、なかなか身体を起こす気になれなかった。
目元が濡れている。泣いていたんだろう。
……私に泣く資格なんてないのに。
……自分のことで精一杯だったなんて、ただの言い訳だ。
許してもらえるなんて思わないけれど、
それでも、心が叫んでいる。

目が覚めた時、彼を失ったかのような気持ちになった。
私のせいだなんて思うことすら傲慢かもしれない。

胸の奥が痛い。
……本当はずっと痛かった。
雪を拒絶したあの日から。
それなのに私は痛みすらも感じないふりをした。

ああ……本当にどうしようもなく雪のことが好きなんだ。
大切なのに、愛しているのに、
自分の気持ちから目を逸らして、耳を塞いだ。
もしもまだ、雪のために出来ることがあるのなら……。
勝手な思い違いかもしれない。

偶然の夢だったのかもしれないけれど、
あの夢の中で見た景色は偽物ではないように感じた。

……雪を理解したい。
今度こそ、この目でしっかりと見るんだ。
もう、逸らさないように。
曲……そうだ、雪は曲が作れなくなったって……。
私はスマホを手に取って、雪のチャンネルを開いた。

……しばらく見ていなかったけど、たしかにここ数週間は新しい動画も何も上がっていない。
けれど反対に、数週間前は2.3日の間で6曲もアップロードされていた。

そのどれもが、タイトルは日付のみ、
サムネイル画像も真っ暗なものだった。

私は震える指でそれらをタップする。
これ、は……。
歌詞はなかった。
どの曲を開いても、全てのフレーズが心に重たく突き刺さるような感覚を覚えた。

……見えた。彼の苦悩が。
それは、少しの間でも私が雪の隣にいたからだろうか。
それとも、私が曲作りと向き合った期間があったからだろうか。

ただどの曲を聞いていてもまるで海底に引きずり込まれて行くかのように息苦しくなる。
曲の中で雪が、手を伸ばして助けを求めているかのように感じた。
雪……。
雪は私を気遣って笑ってくれた。
私が笑顔で居られたのは、彼の優しさのおかげだった。

何度も助けてくれた。
名も知れぬ海底に沈んでしまいそうな時、温かい手を差し伸べて、私をすくい上げてくれた。

それなのに私は、あの時彼の手を振り払った。
違う。私はあの手を離すべきじゃなかった。
離してはいけなかったのに。
明日、会いに行こう。
今日はもう夜中の3時。
眠れる気はしないけど、明日仕事が終わったら雪の元へ向かおう。

厳しい言葉をぶつけられてもいい。
無視されても、拒絶されても仕方ないと思った。

どんな臆測も意味をなさない。
後悔と決意の中で、運命が揺れている。

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