第49話

木漏れ日
177
2023/04/29 17:44
帰宅して、リビングで寛ぐ花をふと見つめた。

時々思う。
今の俺は花に何を返せるだろうと。
……なーに、雪。
俺の視線に気がついた花が、柔らかく笑う。
つられて俺も少し笑う。
……そんな日常の中にいる。
なんでも?
うそ。なんか考えてたでしょ。
……ふふ。
俺は花の隣に腰掛けて、コーヒーを飲み始めた。
すると、花が近くに寄ってくる。
私も!
……自分で持ってきなよ。
えー、ケチ。
はぁ。仕方ないな。
じゃあこの残りあげる。
ちがう!雪と一緒に飲みたいの!
……わかったよ、自分で持ってくるから飲まないで待ってて!
ふっ……なんだよそのこだわり。
わっかんないな、花は。
「わからない」を怖いと思っていた。
今でも怖い。怖いものがたくさんある。

……けど、花のことはちがう。
花のことになると途端に、「わからない」は「面白い」になる。

もっと知りたい。
俺の知らない、わからない彼女が見たい。

そうか、俺は最初から花に惹かれていて、
だから花を……分かりたかったんだ。
わっ……びっくりした、急に……
俺は結局立ち上がって、
リビングに立つ花の頬に触れた。

驚く彼女にそのままキスをする。

……ああ。やっぱり好きだ。
花のことを守りたい。

俺がここにいる理由。
今ここに立てているのは花のおかげだから。
……花、何か欲しいものある?
へ?どうしたのほんとに。大丈夫?
別に。ふと思っただけ。
まぁ……要らないなら……
わぁぁ!待って!考える!
表情がくるくる変わる。
そんな花が可愛い。

俺はまた笑う。
追いかけて、花も笑う。

昼下がり。
木漏れ日が部屋に差し込んで、揺れている。

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