今日は待ちに待ったキャンプ。
1泊2日で各班自由に過ごすことになっている。
八重ちゃんの指示で男子はテント、女子は野菜とお肉を切る作業をする。
少し離れた場所から賑やかな声が聞こえる。
他の班の人もいるのか、大人数でワイワイしている。
その中の中心には礼央くんがいた。
八重ちゃんの言う通り、礼央くんのまわりには何人か女の子もいる。
サッカー部のエースもあって、礼央くんってなっぱり人気者なんだ…班決めも女の子に誘われたのかな?
BBQ開始。
お肉が焼ける音、煙りの匂いがキャンプ場に広がる。
桃香と彗の言い合いを八重ちゃんがあたふたしながら間にはいる。
私はお肉を食べながら見守る。
瑛人くんも、もぐもぐしながら見ている。
2人の言い合いを見ながら笑う瑛人くん。
以前は少し固い感じだった瑛人くんも最近は表情がやわらかくなった気がする。
瑛人くんはたまにドキッとするようなことを言ってくる。少し照れちゃうけど、瑛人くんは思ったことを言っただけだからいつも涼しい顔をしている。
このドキドキは心に秘めておこう…。
先生:「えー、毎年恒例の肝試しをします」
夜になって、先生に集められた。
どうやら毎年、夜になるとペアを組んで近くの神社までお参りに行くという肝試しをやっているらしい。
先生:「くじを引いて、同じ番号の人とペアを組むようにー」
生徒が並んで順番にくじを引いていく。
私のペアは誰かな…?
先生:「じゃあ、番号呼ばれたら並んでいってくれー」
順番に番号が呼ばれていく。
先生:「21番ー!」
まさか礼央くんとペアになると思わなかったなぁ…。でも、相手が知ってる人で良かった。
私達の番になり、ライトをつけて神社に向かう。神社に行ってお参りをし、キャンプ場まで戻ってきたらゴール。
神社までの道は街灯がなく、真っ暗。
ライトだけが頼り。
<ガササッ>
「……ぅわぁぁあ!!!!!」
急に出てきたお化け役らしき人が大声で叫ぶ。
礼央くんが手をさしだす。
そっと手を握る。
礼央くんが前を進む。
私の手をしっかり握って。
手、大きい…男の子ってみんな大きいのかな。
なんか…ドキドキする。
鳥居が見える。
あとはお参りをして戻るだけだ。
ザァッと風が吹く。
帰りは無言だった。
というより、礼央くんの顔を見れなかった。
あんなにまっすぐな気持ちを言われたら、誰だってドキドキする。
今だって、まだドキドキしてる。
変な返事をしてしまった…。
なぜか、断らなかった。
こんなにドキドキしてるのに。
ただ、礼央くんの手は大きくてあったかくて…なんだか落ち着く。
このまま繋いでいたい…って、少し思ってしまった。
キャンプ場に戻るまで、私のドキドキは止まらなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。