いやなんか………ゲーム風?
うん。………まあ。そりゃそうなるよね。
いやー、まあ、驚かない方がおかしいしね……
こっちも驚いてるし。
──
レティシス邸にて。
───名前は?
あれ。どうしたのかな。
私の──名前。
他のことははっきり覚えているのに、私の名前だけ、思い出せない。
私は部屋に戻って、服を着替えて、ベッドに入った。
この違和感も、明日起きたときには消えているだろう。
自分の名前も。多分思い出せる。
私は、モヤモヤとした気持ちを抱えながら眠りについた。
─────
明るい光で目が覚める。
うん、おはよう。と、答えようとしたら、口が勝手に動いた。
え?なんで?私は、こんなこと言いたくないのに。
自分の意思とは反して、身体が勝手に動いて、部屋から出る。
怖がったような目。そりゃそうよ。こんなことを言われれば誰だって怖いわ。
瞬きをした次の瞬間、学園にいた。
ピンクの髪の少女………ミーナのことを押し退けて、ジルアールの横に並んだ。
何故?そもそも、皆は私がこんなことをしていることを、おかしく思わないのだろうか。
スカーは、その整った顔を歪める。
そこでまた、場面が切り替わった。
豪華なシャンデリアあって、大勢の人がいる場所にいた。
なに、これ…………
これじゃ、まるで、私が…………っ
悪役令嬢みたいじゃない。
………そうよ。私は、悪役令嬢なんだ。ヒロインの邪魔をして、婚約破棄されて投獄、国外追放、死亡。
それが……私の……正しい道なんだ。
私は…………
『姉さんっ!』
『マリア様っ!』
………誰?
『大丈夫ですかっ!?』
ああ。………そうよ。私は、こんなことをしたいんじゃない。
私は、みんなと………一緒にいたい。
それだけで、いいや。
『悪役』なんて、ならない。
私は………絶対に。
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はい、どーも!珍しくシリアス回でしたね!
最近のスランプを挽回するために、ちょっと長目に書きました………
では、ありがとうございました!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。