☆0☆
『友情』って…何だろう?
『好き』って…何だろう?
『愛』って…
ホント…何なんだろう?
☆1☆
新「私…侑李くんと…付き合う事になったの。」
それは…
現実で起こる…
悪夢の始まりだった。
〇「え……?」
新「ゴメンね…」
私の恋のキューピッド役を勝って出た親友。
ミイラ取りが、ミイラに取られてしまったのだ。
許せる?
許せない?
それは、今後の人生次第だ。
今すぐ答えが出る問題ではない。
ただ、今は親友とは思えない。
親友が幸せになったのは、喜ばしい事なのに…
☆2☆
侑「〇〇〜!おはよっ!」
侑李くんは、私の気持ちを知らない。
だから、普通に接してくる。
彼女の親友だと思ってか…
侑「どうしたの?元気ないじゃん?」
〇「ゴメン…ほっといて…」
泣いちゃうから…
私は侑李くんから離れたくて、ふたりと一緒に居たくなくて、学校まで走った。
今まで、「侑李くんから離れたい」なんて思った事もなかったから、『好き』という想いが動揺してる。
ホントは…少しでも傍に居たいのに…
☆3☆
こんな自分を隠そうと、本を読んでるフリをしていた。
今は周りの人に触れて欲しくはない。
雄「失恋でもしたのか?」
ぶっきらぼうに聞いてきたのは後ろの席の…
〇「関係ないでしょ!?」
高木雄也。
雄「その返し方、はいそうですって言ってるぞ。」
〇「はぁ?もぉ、ほっといて!」
雄「はいはい。ひとつだけアドバイス。頭 逆さにすると、上手く読めるんじゃないか?!」
頭 逆さ?
何言ってんの?
バカじゃないの…
あ…
開いてた本が、逆さまだった。
バカは私だ…
☆4☆
授業も上の空…
一応、ノートだけは取るけど…
黒板 丸写し。
ん?あれ?
消しゴム…どこだ?
落としたかなぁ…
床をキョロキョロ探しても無い。
どこいったんだろう?
あ"ーーーッ!もぉッ!ついてない!!!
雄「コレか?」
〇「えっ!な、何で持ってんのよ!」
雄「なんだよ、拾ってやったのにッ!」
〇「だから!もぉ、ほっといてっ!」
「こらぁ!静かにしろ!」
もぉ!怒られちゃったじゃん!!!
雄「お前、小学生みたいな事してんじゃねーよ。」
見られた!
よりによって、雄也なんかに!
でも…
今どき、こんな事してる人 居ないか…
もうやめよう。
私は消しゴムカバーに隠されていた名前を、塗りつぶした。
☆5☆
理科とか音楽とか…
移動しなきゃならない授業がイヤだ。
私がトボトボと廊下を歩いていると、
新「〇〇、ゆっくり歩いてたら遅れるよ!」
と、少し離れた前方から振り返り、手招きしながら言う…
『親友』だと、まだ思ってるの?
そうやって、侑李くんと肩を並べて歩きながら言うくせに…
見せ付けてる事さえも気付かないくせに…
こんなの酷だよ…
もぅ耐えられず、振り返り教室へ戻ろうとした。
ドスっ!!!痛っ…
真後ろにいた人にぶつかり、教科書も筆記用具も全て撒き散らし、尻餅をついてしまった。
雄「…大丈夫か?」
・・・てか…
なんでいつも 雄也なの!!!
ムシャクシャしていた私は、今にも殴りかかりそうな勢いで…
〇「なんでいつも傍にいるのよッ!雄也とは関わりたくないって言ってんでしょ!近寄らないで!」
えっ!……//
どう…なっ…てるの//………?
風が流れた…
☆6☆
力強く…
でも痛くはないほどで…
私はグイグイ 引っ張られていた。
見る見るうちに景色が飛んでいく。
繋がれた手の先には、夢中で走る………
雄也。
こんなに背中…大っきかったんだ…
気づくと誰もいない並木道まできていて…
そこで パッ!と手を離された。
ハァ…ハァ…ハァ………
結構な勢いで こんな距離を走った私達は、
息が整うまで、しばらく何も言えなかった。
雄「…見てらんねぇんだよ…………」
え…なんなの?
雄「お前が…辛い場所なんて…いらない」
私…
関わりたくないって、言ってるのに…
どうして?
どうしてなの………?
優しくなんて…
しないでよ…
〇「…バカじゃないの………」
☆7☆
私と雄也と侑李くんは…
幼い頃はよく一緒に遊んでいた。
侑「い〜ち、に〜い、さ〜ん………」
オニが数え出すと、いっつも、
雄「〇〇!一緒に隠れるぞッ!」
っと、私が「うん!」って言う前に走り出す。
いっつも手を繋いで連れて行ってくれる。
私は幼いながらも、そんな雄也に恋をしていた。
ある時…私がオニで、ふたりを探していたら…
物陰から侑李くんと雄也の話し声が聞こえてきた。
侑「〇〇のコト好きだろ?」
雄「えッ!なッ、なーに言ってんだよ!ちげーよ!
〇〇は、ちっこいし、妹みたいだし…ちげーよ!
侑李って、バカじゃねーの!お前こそ好きなんじゃねーの?
ちっこい同士だし、お似合いじゃねーの!」
雄也が、畳み掛けるように発した言葉達は…
幼い私の心を攻撃していった。
泣いてた私を侑李くんが見つけて、
隠れんぼは終わった。
☆8☆
でも私が今、雄也と関わりたくないワケは…
そんな、幼い頃の失恋ではない。
中学になった私達は、相変わらず仲良しで…
身体検査から戻ってきた侑李くんに、私と話してた女の子が「背伸びた?」と聞いた。
侑「うん!たくさん伸びてたよ!」
女「でもまだ、〇〇と同じくらいかなぁ〜?」
と、その女の子は侑李くんを そそのかせ、私を立たせた。
〇「ホント?私と同じくらい?」
侑「や、〇〇より高いよ!ほらっ!」
と、私は侑李くんと背中を合わせた。
その瞬間…
背中から侑李くんの温かさと、何かが伝わった…
ホントだ…
侑李くん…
いつの間に、私より大きくなってたの?
それは、今までの感覚では無かった。
そこには、『友達』では済まない想いが芽生えていたんだ。
これが…
『好き』………………………………なんだ…
☆9☆
私はずっと、侑李くんを『好き』なコトを隠しながら過ごしてきた。
私達3人が仲良しだったのは、この頃まで。
いつしか、それぞれの部活などで新しい友達や生活ができ、行動を一緒にする事が無くなっていた。
そしてある日、気付いた。
雄也が侑李くんを避けているコトを…
私は、見て見ぬ振りをして…
ずっと ふたりを見ていた。
雄「また一緒だな。」
高校生になり、また同じクラスで、
「〇〇とは腐れ縁かな〜」なんてニヤついてる雄也。
見て見ぬフリをしてきたけど…
フリって、なんかダメかな…
そう思った私は、思い切って聞いてみた。
〇「侑李くんは?」
雄「えっ?」
〇「侑李くんも同じ………腐れ縁でしょ?」
3人はもう、仲良しでは無いの?
違う友達が出来たからって…
嫌いになっちゃうの?
私の中にあった、ずっと感じてた淋しさ…
雄也と侑李くんを、私はずっと…
『好き』でいたい。
☆10☆
その日から私は、雄也に冷たく当たり、避けるようになった。
でも、高校生活は、毎日楽しかった。
クラスに親友ができたから!
新「侑李くんに告らないの?」
〇「私…もう知ってるの。侑李くんの気持ち。」
新「え?どういうこと?」
私が雄也を避けるようになったあの日。
雄也の口から出た言葉。
雄「侑李が他の奴に言ったんだ…俺がいるところで。〇〇のことなんて好きじゃないって…」
〇「えっ…………」
どうして?
私…悪いことした?
それに…
想いも伝えてないのに…
終わっちゃったの?
私の恋。
〇「…ゆ、侑李くんが…そんなこと言うワケないじゃん…」
私は受け入れられなかったんだ。
こんな風に、恋が…
終わってしまうコトを。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。