第3話

『好きです』と伝えにくくなりました
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2019/08/30 15:18


先輩たちの最後の大会はおわった。


学校に帰って部室で挨拶があった。



一年生から挨拶をしていった。

感謝の言葉を伝える。




あっという間に私の番は来てしまった。


エミ
「3年間、ありがとうございました。
慣れないことばかりで迷惑をかけてしまいましたが、マネになってくれてありがとうって言ってもらえて嬉しかったです。
先輩たちの走る姿が大好きでした。
サラ先輩、こんな私と仲良くしてくれてありがとうございました!大好きです!!
本当にお疲れ様でした、ありがとうございました。」

そういうと、サラ先輩は頭を撫でてくれた。




そのあとサラ先輩、3年生が挨拶をしていった。

カイト先輩は最後に喋った。



カイト
「3年間、本当に楽しかった。
やっぱり辛いこともあったけど…
最後までいちばんにこだわってよかった。
応援してくれたり、ほんとうにありがとう。
俺は高校では陸上やんないから今度は俺が応援する!!頑張れ!!」



そうなんだ… カイト先輩、走るのやめるんだ…


部長
「うそだろ?カイト、部活やめる?
絶対やめないと思ってた…」


わたしもそう思ってました。


カイト
「やりたいことみつけたから、
走ることよりも大切だし。」


その言葉は先輩たちはわかったみたいだったけど
私にはまったくわからなかった。


サラ
「カイト〜!かっこいいね!」


サラ先輩がカイト先輩の背中を叩きながらそう言った。



カイト
「サラちゃん痛い!」


.


カイト
「エミちゃん、たくさんありがとうね。」
エミ
「いえ!3年間お疲れ様でした。」
カイト
「うん、すごい濃い3年間だった。」





帰り道。カイト先輩にそう言われた。



こうやって一緒に帰るのも最初で最後だと思う。



今日は偶々。


先輩がわたしの家の方向に用があるらしい。







エミ
「あの、聞いてもいいですか?走るより大切なこと。」




聞いてはいけない気もしたけど聞いてしまった。

もう話せる機会もなくなるし、、、




カイト
「サクラのこと。サクラのことが走るのよりも大切。」




頭を殴られた気分だった。やっぱり先輩はサクラさんだ。




カイト
「俺らの学年では有名なことなんだけど、
サクラって双子のおねーちゃんがいたんだ。
だけど亡くなった、去年の春。両親と一緒に。
家族全員で交通事故にあって助かったのはサクラだけ。
誰かが見てないとなにするか分からないから。
実際、サクラは今、病院通ってるし。」
エミ
「サクラさんの為に走るのやめちゃうんですか?」



あぁ、こんなことを聞いてしまうわたしって嫌な奴だ。



カイト
「ううん、それは違うよ。エミちゃん。
ドクターストップ。
みんなには言ってないけど足故障してるし。」
エミ
「そうだったんですか…」





ねえ、先輩。


わたしはその言葉を聞いてますます『好きです』と伝えにくくなりました。


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