私が、殺した。
私においていかれた皆が、私に駆け寄る。
優は死んでいる死神を見つめる。
顔、見られてないだろうか。
きっと今の私の顔は、酷い状態だろう。
大量の涙
夏々の血
全てがこぼれ落ちたような目
微かに笑う口
本当、酷い顔だ。
日向はそう言って辺りを見渡す。
私はそう言って、腕の中にいる夏々をぎゅっと
抱き締める。
優は黙って、夏々に歩み寄った。
そして、夏々の首にそっと触れる。
『まだ、生きてるよ。』
...え?
優は冷静だった。
夏々が死んだかもしれない状況で、冷静だった。
私は知ってる。
皆が悲しかったり、苦しかったり、絶望に
立たされた時、優はいつもより冷静になる。
いつも冷静なのに。
いつもより冷静になる。
それは何故か。
優しいから。
賢いから。
強いから。
優は人のことばかり考える。
もちろん、自分のことも。
優がいつも冷静を保てるのは、その場の皆を疑い、
信じているから。
その意味は、分からない。
けど、それが優なんだと思う。
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気付いたら、知らない部屋のベッドで寝ていた。
櫻子先輩...?
確か私は死んで...
ま、まーちゃん?
櫻子先輩は優しく微笑んだ。
その笑顔を見て、私はほっと胸を撫で下ろした。
櫻子先輩はそう言って微笑む。
『麻白が殺した。』
“また”、やっちゃった...?
な、なーちゃん?
そんなの、分からない。
助ける?暗闇から?
私に、出来るの?
でも...
『“親友”ですから。』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。