...だからね。
私は...
え...?
夏々はそう言って「にしし」と笑う。
“親友”
...素敵な響きだった。
私は、夏々の親友で良いんですか?
私は、夏々の隣にいて良いんですか?
夏々はそう言ってまた、「にしし」と笑う。
夏々は、本当に凄いや。
一瞬で人の心を優しい光で照らしちゃうんだから。
私は笑った。
─────────────────────────────────
夕日が、二人の少女を照らす。
一人の少女は、いつも優しくて真っ直ぐな人間。
一人の少女は、いつも前向きで笑っている死神。
死神は人間に話した。
『涙のない世界があったらいいのに。』
人間は答えた。
『私は、いらないと思う。』
『何で...?』
『だって、嬉し涙とかがなくなっちゃうでしょ?』
『それに、悲しい時、苦しい時、泣いたらすっきり
するでしょ?』
『だからね。涙は必要だと思うんだ。』
死神は思った。
「私も、泣いたらすっきりした」と。
『やっぱり、君は凄いや。』
『夏々。』
─ The end ─
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!