夏休み三日目。
露田さんに出くわしてしまった。
そうここは…
浴衣展。
私はおじさんに言われて浴衣を新調しに来たのだ。
夏祭りのためだけに。
私は露田さんの言葉に喉をつまらせた。
実際、そうだ。
私がころんとそういう仲ではないのに、距離が近かった。
それで勘違いされるのも、納得の結果だ。
露田さんは遠い目をして言う。
まただ。
露田さんはよく、遠い目をする。
まるで昔の自分を見ているかのような、そんな遠い目。
自分の過ちを、取り返しの付かない過ちを思い出しているかのような、そんな目。
聞きたくても聞けなかった。怖くて聞けなかった。
それを聞くと、露田さんがいやがってしまうような気がして…
突然かけられた声に、私たちは戸惑っていた。
二人とも楽しそうな顔をしている。
この人、同じ高校じゃないからおそらく中学校の時の露田さんの同級生だったんだろう。
露田さん、笑ってるな…
私はその名前に驚いて反応してしまう。
なんで萌の名前が__?
そのあと何回か言葉を交わすと、その人は帰っていった。
私の言葉に露田さんの体は震えた。
そして数十秒止まったあとに、観念した、というように肩を落として歩き出した。
戸惑いながら付いていくと、露田さんは隠し部屋っぽい奥の席に案内してくれた。
そういいながらまた遠い目をして私の方に向き直る。
しかし、その目には覚悟のようなものがつまっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。