第44話

もうこれ以上
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2020/09/07 10:00
私はこの日、始めてプールをうらんだ。
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事の発端は(お察しの通り)萌。
あの人が『プールに落ちたものとって~(ほぼ脅し)』と言ったのでとったらまあ予想通り突き落とされた。
そこまでは、まだいい。
そのあとなんと、プールの鍵を閉められた。
さらにプールからでるための梯子もとられた。
生憎、濡れた制服と可愛らしい(小さい)身長ではプールサイドに上がることができない。
尾田 南
尾田 南
ころん……来てくれないかな……
はっ!なにいってんの私?!
ころんの事なんかどうでも良いの!今は自分の心配をしなさい!
…とか言いつつも、頭のなかにはあの水色頭が浮かんでくる。
尾田 南
尾田 南
(…あいつが、ピンチの時に無駄に駆けつけるのが悪いのよ)









___バカ。嫌いなら絡まないでよ。
私がこぼれ落ちたに涙をごしごしと拭いたとき。
ころん
ころん
…南!?
尾田 南
尾田 南
こ、ろん?
ころん
ころん
そんなところでなにしてるの?趣味?
尾田 南
尾田 南
そんな悪趣味じゃないわよ
また来た。
ころん
ころん
…つか、いつからそこいんの?大丈夫?
尾田 南
尾田 南
…一時間くらい?時計壊れたからわかんない
ころん
ころん
は?!おい、ちょっとこっち来い!
そういわれてゆっくりとじゃぶじゃぶころんのほうに近寄った。
するといきなり腕をぐいっと捕まれる。
尾田 南
尾田 南
え、ちょ、な!
ころん
ころん
腕めっちゃつめたいぞ!冷たいぞ!
そりゃこんだけ長くプールにいるんだから当然だ。
あと冷たいを強調して二回言うな!
ころん
ころん
僕の手つかんで!
降り離すこともできたはずなのに。
私はまたも、ころんの腕をつかんでしまった。
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<ころんside>
部活帰りに何気なくプールに目をやったら、
同居しているやつが溺れていて、
長時間プールにいて体がとても冷たく心配になり、
体育着を貸している。






と言ったら聞こえはよくなるのだろうか?
実際のところ、僕はばれないように『嫌い』と言ったら好きなやつに聞かれて、
探したところ偶然見つけて自分の体操着を貸している、という展開だ。
しかも…
尾田 南
尾田 南
…ねえころん!この体操着大きい!もっと小さいのないの?
ころん
ころん
僕のサイズしかないの!
たまにこういう声をかけてくる。
…ダメだ、少し想像して楽しんでいる自分がいる。
尾田 南
尾田 南
あ、あのさ…ブカブカで変じゃない?
プールによくあるあのボイラー室みたいなところから着替えてでてきた南は、
僕の体操着をきてでてきた。



___しかもブカブカの。
ころん
ころん
(ヤバ…萌え袖?普通にかわい……)
尾田 南
尾田 南
やっぱ変でしょ!こんなんで歩いてかえったら完璧に変な目で見られるよ!
水浸しの制服で変えるよりはましだろ。
とか思いつつも直視できない。
ころん
ころん
(なにより自分がきていた服が…南に…)
ダメだ。気持ち悪い想像しかでてこない。
ころん
ころん
…帰るぞ
尾田 南
尾田 南
あ、ちょ、まって!
南は帰ろうとする僕のことを止めた。
尾田 南
尾田 南
…私のこと嫌いなら、助けなくてもよかったのに
南は自分が無視されたことよりも、
僕が嫌いといったことよりも、
自分が助かったことに疑問を覚えていた。
ころん
ころん
なんでって…
尾田 南
尾田 南
無視をしたのも、嫌いって言ったのも、全部本心なら、私のことほっとくでしょ
尾田 南
尾田 南
なのに…なんで?
そういった南の瞳は悲しげだった。
ころん
ころん
(そうだ、南は…)






女の子だ。
強そうに見えるけど、普通の高校二年生だ。
いじめられて悩む、自分と同じ人間。
それなのに、僕は…





ころん
ころん
…その、無視したことは、ごめん
ころん
ころん
別に、嫌いじゃないから
口からはかわいくない言葉が飛び出す。
ころん
ころん
嫌いって言ったのは、蓮に誤解されたくないからで
ころん
ころん
無視したのは、その……
深い理由があって!
支離滅裂で、ちゃんとした理論も話せていない。
ころん
ころん
だから…!
尾田 南
尾田 南
分かった
南が、話した。
尾田 南
尾田 南
わざとじゃないでしょ?
理由があるんでしょ?
尾田 南
尾田 南
ならしょうがないよ
そういって南はニコッと笑った。





南は、優しい。





だから、僕がどんなにひどいことをしても笑って許してくれる。





相手がどんなにクズでも、どんなに酷いことを自分に・・・しても。





だから僕は、南のことを好きになったんだと思う。





でも、だから南は___




尾田 南
尾田 南
ん?ころんどしたの?
もしかしてさっきのにてれちゃった?(笑)かわいいなぁ
ころん
ころん
(もう、これ以上……)
ころん
ころん
これ以上人のために傷つかないでくれよ……
尾田 南
尾田 南
え?なに?





そのいたずらっ子のような笑みに、僕の胸は張り裂けそうになった。

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