第54話

不公平
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2020/09/21 07:39
神様は、不公平だと思う。
死にたくないと思う人を殺し、死にたいと思う人を生かす。
そうやって、楽しんでいる極悪人だ。
















私も人生で二回ほど死にたいと思ったことがあるが、全てなにも起きずに
そのまま、助かって終了だ。
私のような迷惑ばかりかけるやつが生き残り、お父さんやお母さんが死んでいくなんて
そんなの、非合理的で意味のない行動だ。










だから、せめて____
尾田 南
尾田 南
自分で死ぬくらいは、許して……
人に迷惑をかけて、
楽しくなくて
それでもなお、生き続けなくてはいけない。
そんな人生なら、私は、私は……










尾田 南
尾田 南
私は、いらないや










そう思って夜の空に飛び込もうとしたとき
ひとつの電話がかかってきていることに気がついた。













尾田 南
尾田 南
こ、ろん…?











なにいまさら。
お見舞いにすら、来てくれなかったくせに。
…無視したくせに。
そう思って無視したが、留守電まで入っている。
そんなに大事なようなのかと、スマホを見てみた。
そしたら____

















ころん
ころん
『南!聞いてるか?なに病室からいなくなってるんだよ!心配するだろ!』
ころん
ころん
『これ聞いたらかけ直せよ!絶対だからな!あと……』
ころん
ころん
『その、お見舞いいけなくて、ごめん』
















たったそれだけの君の言葉に、私はどれだけ救われただろう。


















たったその一言で、君はどれだけの人を救って来たのだろう。


















尾田 南
尾田 南
ああ、もう…
尾田 南
尾田 南
飛び降りる気、無くしちゃったじゃん…
尾田 南
尾田 南
バカ…
そう言って泣き出しそうになると、屋上に息を切らしたころんがやって来た。




_______________________



ころん
ころん
…なんでこんなところにいるんだよ
尾田 南
尾田 南
…天体観測?
ころん
ころん
お前理科嫌いだろ
そうぶっきらぼうに答えるころんに私はふきだした。
その後、沈黙が続く。
尾田 南
尾田 南
…私のお父さんね、大学の教授だったの
ころん
ころん
…は?
尾田 南
尾田 南
若くして教授になって、優しくて生徒からも人気があって、モテモテで
尾田 南
尾田 南
すごい良いお父さんだった
私は、何故か唐突に話したくなった。
尾田 南
尾田 南
お母さんはデパートに勤めてて、丁寧な接客とかで評価されて
尾田 南
尾田 南
30代で婦人服フロアのチーフ任されちゃうんだよ?
尾田 南
尾田 南
すごくない?
ころん
ころん
…ああ、すごい
と、またころんはぶっきらぼうにそっぽを向いて答える。
尾田 南
尾田 南
なかなか仕事で帰ってこれないけど、私のこと大切にしてくれて
尾田 南
尾田 南
優しくて、面白くて、最高の両親なの
私はそこまで言うと、言葉をつまらせた。




尾田 南
尾田 南
なのに、私をかばって事故で死んじゃって
尾田 南
尾田 南
私って、生きてる意味あるのかなぁ?






そう言うと、涙が出てきた。





ころん
ころん
…もっと、適当でいいよ
尾田 南
尾田 南
…え?
ころん
ころん
だって、生きてること事態奇跡に近いし
ころん
ころん
人生なんて行き当たりばったりだろ?あんまり過去振り替えっても、仕方ないんじゃね?
ころん
ころん
それに、僕は…
ころんはそう言うと、顔をそらした。










ころん
ころん
僕は、南がいないと、いやだ、から…
尾田 南
尾田 南
それってどういう…
ころん
ころん
な、なんでもない!とりま病室もどれバカ!
そう言うところんは走って逃げていった。






どうしよう、ドキドキして、顔が暑い。






胸の音がうるさくて、すごくドキドキする。





尾田 南
尾田 南
って、なに私はころんにドキドキしてんのよ!






違う!ころんはヘタレで、すぐにだるいっていって






バカで、ゲームも別にそんなに上手くなくて…





尾田 南
尾田 南
でも、たまに、かっこいい…
尾田 南
尾田 南
!?だからなに言ってるのよ///






お父さん。お母さん。






これがなんという感情かはよくわかりませんが






とりあえずなんとか、生きていけそうです。

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