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私の願いは叶わず、私はずっと暗闇にいた。
でも、定期的に渦が出来ていた。でも、声は少ししか聞こえず、内容も、声の主も分からなかった。
私は、ずっと母のことが気にかかっていた。
私の母は、私が高校生になってから亡くなった。だから、母もここにいるのではないかと思っていたけれど、母の姿は見つからなかった。
そういえば、お母さんは、私のことをよく知ってたなぁ…。
母は、私の友人関係や、恋愛関係を、聞かなくても大体わかっていた。まあ、母親の勘のようなものなのだろう。でも、私はそんな母が大好きだった。
お母さん、彼氏が出来たら、どんな人か聞かせてって言ってたっけ。
母は、ずっと私に彼氏が出来ないか気にかけていて、いつも、彼氏が出来たら家に呼んでとか、どんな人か教えてとか、どうせ分かると思うのに、いつもあの童顔に笑みを浮かべながら話していた。
今なら、お母さんにも届くかなー。
少し期待をしながら、私はぽつり、ぽつりと優斗のことを喋った。
親がお菓子屋さんであること、バレンタインにお菓子をくれたこと…
話はどんどん脱線していき、生きていた頃の日常を、全て話しきったころには、久しぶりに笑顔が戻ってきた気がした。
すると、闇が再び変わった。でも、今までとは違い、もっと、深く、大きく渦巻いていて、私はそれに吸い込まれていった。
「自分を信じて。あなたの大切な人を信じて。そして、笑って。あなた。」
この声はーーー
次の瞬間、私は意識を失った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。