第5話

ありがとう。
57
2018/02/06 15:13
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あなたは、救急隊員に担架に乗せられ、病院へと搬送された。知り合いだと言って、俺も救急車に乗せてもらった。

俺は気が気じゃなくて、ずっと、あなたの名前を呼び続けていた。

あなたの命が危ないって時に、俺は何もしてやれねーのかよ。

病院に着いてから、あなたはすぐに手術室に運ばれた。雪美は、俺が雪美の両親に連絡して、迎えに来てもらった。

あなた…。

俺は、何も出来なかった。ただ、祈るくらいのことしか出来なかった。すると、近くで何か騒ぎ声が聞こえた。見てみると、もうひとつの手術室の前で、若い夫婦が医師に礼を言っているようだった。こちらに気づくなり、その二人は俺に近づいてきた。
奥さん
あなたさんに、助けていただいた者の母です。本当に、ありがとうございます。
優斗
あ、いえ…。
じゃあ、娘さんは、助かったんですね…
良かった。
医師
あの子が助かったのは、あなたさんのおかげですよ。一時的に意識を失っていただけなので、外傷もほとんどありませんでしたが、あなたさんの救助と応急処置がなければ、危ないところでした。
優斗
そう、だったんですか…。
奥さん
本当に、感謝申し上げます。
あなたさんも、早く、良くなるといいですね…。
優斗
ありがとうございます。
夫婦は丁寧にお辞儀をしてから、廊下を歩いていった。

あなた…

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