第11話

宮近海斗 × バレンタイン
4,695
2019/02/14 13:12

今年で彼と過ごすバレンタインは何回目だろう



2人にとってバレンタインは大切な日



今年はなんだかやる気が出て



いつもより気合いを入れて手作りした






「ただいまー」



『おかえりなさい』



「はぁ疲れたぁ」



『お疲れ様』





彼はそんなことを言いながら机に鞄を置いて



コートを脱いでハンガーに掛ける



それはいつもと同じ



でも今日は大きめの紙袋も机に置かれた





『これどうしたの?』



「あーこれ会社で貰ったんだよね」





そんなことだろうと思った



彼はすごくモテる



この紙袋には一体いくつのチョコが入ってるんだろう



きっと彼のことだから本命もあるはず





『こんなにたくさん…みんなすごいね』



「でも嬉しいよね、俺のために」





彼女の前でそんなこと言っちゃうんだ



紙袋の隙間から覗いた箱には高級チョコのお店の名前



気合いを入れたはずの私だけど自信を無くして



渡したくなくなってしまった





「あなたからはないの?」



『…、今年はない』





ほんとはちゃんと準備してギリギリまで



ラッピングも悩んでた



けどこんな大量のチョコを見てしまっては



渡せるはずがない





「えー俺あなたが作るチョコ毎年楽しみにしてたのになぁ」



「ほんとにないの?」



『…ないって言ってるでしょ、』





変なところで鋭い彼に何回焦っただろう



普段はマイペースで何を考えてるかわからないのに





「じゃああそこに置いてある箱は?」



『、あ…!』






帰ってきたらすぐ渡そうと置いておいた箱が



彼の座るソファからバッチリ見えていた



すぐに動いて隠そうとしたけど



追いかけてきた彼に止められてしまった





「これ俺のでしょ?」



『…違うもん』



「じゃあ誰のなの?」



『……しめちゃんの、』



「なんでしめにこんな豪華なのあげるわけ?」



『いつもお世話になってるんだからいいじゃん』





しめちゃんにあげるなんて咄嗟についた嘘だけど



彼に強く当たってしまう





「もう、これ俺のなんでしょ?」



『だから、違うって…、』





どうしてこんなにも素直になれないのか



こんな私は嫌になる





「もう勝手に開けるからね」



『…!だめ…!!』





私の抵抗はあっさりかわされ



彼は手に持っている箱を開ける





「え、」





何に驚いているんだろうか



自分でも思う料理が上達したこと



いつもよりだいぶ豪華なこと



それとも…   





箱の中身が付き合うきっかけになったものなこと





「え、これって…、」



『そうだよ』














『宮近くん…!』



「あぁあなたちゃん、お待たせ」



『あの、これ、よかったら受け取ってください!』



「え、これ俺に?」





あの時私はどこからきたのか勇気を出して



バレンタインに彼にチョコを渡した



今思えば我ながら本当に頑張ったと思う





『これ渡したかっただけなので失礼します…!、』



「あっ待って!」



『え、?』



「これ義理?」



『え、それは、その…』



「俺、あなたちゃんのこと好きなんだけど」



『…!』



「あなたちゃんも俺のこと好きだったりする…?」



『えっと、好き、です…』



「まじ…!?じゃあ俺と付き合って…!」



『はい…!こんな私でよければ…!』













あの日から私と彼は始まった



だからバレンタインデーは2人の記念日だったりする





「なんでもっと早く渡してくれなかったの」





彼は拗ねたように尋ねてくる



もう素直になってもいいかな





『渡せるわけないじゃん…こんなの見たら』





私の目線の先を彼の目線が追う





「確かに…、」





なんて苦笑いをして



彼は私を抱き締める





「嫉妬したの?」



『…別にそんなんじゃないし、』





やっぱり私は素直になれないみたい



それでも彼は私を受け入れてくれるから



いつまでも彼に溺れていくんだ





チュッ





「あなた、いつもありがとう」





''愛してる''





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