(美桜 side)
「3番線〜、ドアがしまりま〜す。ご注意ください。」
車長さんのアナウンスが響く。
水曜日の夜の22:30。がらんとした車内。
大好きな端の席に座り、今日の動画を見ながら自分の中で反省会を開いていた。
リハをしている所から、家の最寄りまで電車で30分。立派なマンションだが、実はジャニーズに所属している人が住む、実質の寮である。もちろん、SixTONESも。
マンションには、そういう人たちが集まるため、自主的に練習ができるところが地下にあり、私もそこで夜遅くまでよく練習をしている。
音量を少し小さくしながら、最寄り駅を聞き逃さないよう、でも今日のことが確認できるようにしていた。
時間がたつのはあっという間で、次が最寄り駅だ。
「❋❋❋❋❋駅。お出口は左側です。」
そう言われて、いつものように立とうとしたときだった。
美「え??」
恐れていたことが起きてしまった。
下半身に力が入らず、立ち上がれない。左にある棒を掴んで、力をなんとかそちらにかけても、立ち上がることができない。
美「っ!!ん!!なん、で………。」
最寄り駅の発車時間となり、ドアが閉まる。
次の駅に絶対降りよう。そう重って何度も何度も立ち上がろうとしても試みる。
それを繰り返し、ようやく立てたときには最寄りから5つ先の駅になってしまった。
すぐ電車から降り、反対のホームに歩く。
もう、恐怖で唇が真っ青になっていただろう。
私の体に何が起こっているの??
怖い。怖いよ。
そう思い、きょものラインを開いて、電話ボタンを押そうとするが、
美「心配かけたくないな。」
そう思い、画面を閉じる。
最寄り駅につき、駅から徒歩10分の自分のマンションに戻る。
誰にも会いたくない。だって、先に帰ったのに、ここで会ったら怪しまれる。
美「あっ………」
数メートル先には、みんなが見える。
どうにか気付かれないように、エレベーターに乗り込み、自分の部屋に帰った。
そして、マネージャーに
〘明日、ちょっと病院に行きたいので、リハお休みします。ご迷惑おかけします。よろしくおねがいします。〙
そう送って、深い眠りについた。
何でもありませんように。みんなと無事デビューできますように。
何度も何度も星に願いごとをしながら、いつの間にか瞼が落ち、眠りについた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。