第8話

迫りくる病魔の影
2,336
2021/04/03 12:36
(美桜 side)

「3番線〜、ドアがしまりま〜す。ご注意ください。」

車長さんのアナウンスが響く。

水曜日の夜の22:30。がらんとした車内。

大好きな端の席に座り、今日の動画を見ながら自分の中で反省会を開いていた。

リハをしている所から、家の最寄りまで電車で30分。立派なマンションだが、実はジャニーズに所属している人が住む、実質の寮である。もちろん、SixTONESも。

マンションには、そういう人たちが集まるため、自主的に練習ができるところが地下にあり、私もそこで夜遅くまでよく練習をしている。

音量を少し小さくしながら、最寄り駅を聞き逃さないよう、でも今日のことが確認できるようにしていた。


時間がたつのはあっという間で、次が最寄り駅だ。

「❋❋❋❋❋駅。お出口は左側です。」

そう言われて、いつものように立とうとしたときだった。

美「え??」

恐れていたことが起きてしまった。

下半身に力が入らず、立ち上がれない。左にある棒を掴んで、力をなんとかそちらにかけても、立ち上がることができない。


美「っ!!ん!!なん、で………。」


最寄り駅の発車時間となり、ドアが閉まる。

次の駅に絶対降りよう。そう重って何度も何度も立ち上がろうとしても試みる。


それを繰り返し、ようやく立てたときには最寄りから5つ先の駅になってしまった。

すぐ電車から降り、反対のホームに歩く。


もう、恐怖で唇が真っ青になっていただろう。

私の体に何が起こっているの??

怖い。怖いよ。

そう思い、きょものラインを開いて、電話ボタンを押そうとするが、

美「心配かけたくないな。」

そう思い、画面を閉じる。

最寄り駅につき、駅から徒歩10分の自分のマンションに戻る。

誰にも会いたくない。だって、先に帰ったのに、ここで会ったら怪しまれる。

美「あっ………」

数メートル先には、みんなが見える。

どうにか気付かれないように、エレベーターに乗り込み、自分の部屋に帰った。

そして、マネージャーに

〘明日、ちょっと病院に行きたいので、リハお休みします。ご迷惑おかけします。よろしくおねがいします。〙

そう送って、深い眠りについた。

何でもありませんように。みんなと無事デビューできますように。

何度も何度も星に願いごとをしながら、いつの間にか瞼が落ち、眠りについた。

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