僕はいつも通りの時間で、いつも通りに屋上で一人タバコを吸おうとする。
ポッケからライターを取り出して、火をつけようとした。
ライターを見て、考え事した。今日のタバコの味なんか不味そうな気がして、やめた。
教室に向かう。廊下で君と偶然会う。気まずい。
歩幅は変わらず、スピードも変わらず、俺らは近づく。
そしてすれ違った。赤の他人のように。目も合わせず。
話しかけられなかった。
僕は足を止めて、チラッと後ろを見る。ちょっと驚く。
君も足を止めている。久しぶりに見る後ろ姿。胸がざわめく。
朝日で廊下がうざ明るい。
人々の声がぼやけていく。
君ばっか見つめる。
君はゆっくり頭を上げる。
君は足を動かす。
君は前へ進む。
君は廊下から消える。 消えた。
消えた。
ポカンと、口が開く。
なんなんだよ。
fin…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!