第22話

Another12
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2021/06/20 15:00
 最後の一人だった。

 今まで父の代からお世話になってきた重役たちを説き伏せて、退任へ追い込む。この労力は計り知れないはずだが翼やソルたちは『大丈夫、任しとけ』って言うもんだから、ありがたかった。
康祐
俺は、俺は辞めて欲しくないです
 最後の一人。彼はなにも悪いことはしていない。ただ重役であっただけで、翼たちも辞めなくていいんじゃないかと話していた。
康祐
まだ、教えて欲しいことがたくさんあるから、だから
康祐
ヒデさん、残ってくれませんか?
ヒデ
あんた、私が残ることがどういう意味しているかわかってる?
多くのこの国を支えた官僚を蹴落としてまでやった改革が無に帰するの。
私を切ってまでが改革。
 ヒデさんは教育係だった。国の歴史から国への忠誠心、また武力はもちろん読み書きの語学についても教えてくれた。
康祐
でも、ヒデさんはなんも悪いことしてなかった。僕たちに教えてくれた国への忠誠を消して破ってなかった。
ヒデ
そうね、それは私のポリシーだからね。他の人たちと一緒にしないで欲しいわ
康祐
だから、ヒデさんは残ってくれて…
ヒデ
康祐、私はあなたが正しいの思ってるの。この政策は間違っていない。腐った膿たちを仲間と協力してこんな短期間で浄化させるなんて素晴らしい。
康祐
だから…
ヒデ
ナンセンス!いい、康祐?私一人の事かもしれない。それでも、私一人残すだけで政策が歪む。
ヒデ
そーんな顔しないの。私がいなくなることで、官僚は総替え。勝に下らないことしてる輩もきっと尻尾巻いて逃げるはず。
ヒデ
いーい?あなたが今守るべきは私じゃなくて勝や瑠姫もだけど、あなたについて来てくれてる仲間たちも守らなきゃならないの
ヒデ
しっかりなさい。あんたはやればできるんだから
ヒデ
後ろで聞いてるあんたたちもね
秀太
バレてた
えりっくが泣くからだよ
えりっく
泣きたくもなるさー
ヒデ
ここの官職を離れたからといって私の人生終わるわけじゃないの。まだまだやりたいこともいっぱいいあるんだから。もちろん、私は悪いことしてないんですから退職金は弾んでもらうわよ?
秀太
もちろんです。でも、先生…
ヒデ
明日の勝の妃選びは見ていきたいけどね。文がどうなっているか、楽しみじゃない?
ヒデ
明日で世界は変わるはずよ。見えてなかった敵があぶり出されるかもしれないし、逆にいきなり世界が変わるかもしれない。
ヒデ
私一人でこんなにボロボロなって、本当に出来んの?あんたたち~
ここまで来たからには、僕たちは負ける気はありません
秀太
力をあわせて、国を、帝も支えていきます。
康祐
父上を越えて見せます。父が残してくれた、仲間たちと一緒に
ヒデ
この国の、あなたたちの成長楽しみにしてるわ
 ヒデさんはあっという間に荷物をまとめていた。わかっていたんだと思う。待っていたのかもしれない。

 そして、あの日がやってくる

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