朝は時間通りに起きようと思っていたのに、昨日あんなことがあったからなんだか眠れなくて、
多分、帝付きの女官と思われるおばさま達が待機していた。馬車のなかで服を着せ替えられ、化粧をされ…
そうして僕の変装は成功し、後宮入りとなった。一応所作的なものは母を見てたしなんとかなるだろうと思っていたが
それほどまでして僕を呼びたい理由はなんだろう?始まりは弟帝の毒だったとしても、自分の近くに男を引き入れる意味がわからない。まぁ、秀太から男の機能を止める薬だかをもらって飲むわけなんだけど
僕はでっかくため息を着いて、馬車を降りた。そこには、女の園である後宮の入り口があった。女の人が二人待っていた。
花蓮さんは宮勤めの親がいる子どもでよく遊んでいたときの憧れのお姉さんだ。いつも優しくて後宮に女官として入るって言うときはみんなして泣いたような…
秀太が俺に向かってにやにやとウインクした。解せない。まぁ、仕方ないんだけど。
拓美さんが顔を赤らめた気がした。あ、そうか、後宮勤めだからあまり男に耐性がないのか。
冗談なのか冗談じゃないのかわからない二人の会話。もう僕もなりきるしかない。
秀太が僕の頭を2回軽く叩いて、耳元で
と言って去っていった。暇そうに見えたけど実は忙しいのに僕を心配してくれていたのかもしれない。
皇后の御所に行くまで、花蓮さんから軽く後宮の説明を聞いていた。
どう気を付ければいいかわかんないけど…
思いっきり身長をいじられている気がする。とはいえ、この子だって僕とたいした変わらないのに…女の子とたいした変わらないのか。自分で考えておいてショックを受けた。
喜んでいいんだか悪いんだか複雑な気持ちになる。
照れる。なんなんだこの人たちは…いや、女の園って言うのはこういうことなのか?
ものすごい華美と言うわけではないが、しっかりとした佇まいの建物だった。
皇后の宮廷似はいると4人の女官が睨んできた。やっぱり余所者が入るのは面白くないか
テンションの高い声が奥から聞こえてきた。これも実は懐かしい声で、
皇后はすごい勢いで抱きついてきた。今、女装してるけど僕男なんだけど…
いや、そういってる横で花蓮さんがすごい殺意出してるんだけど
そういって奥の部屋に通された。僕と皇后様と花蓮さん。他に誰もいないことを確認すると
逆効果かもしれないけど、と思ったけどとりあえず飲み込んだ。
皇后様こと瑠姫様はいわゆる許嫁と言うもので小さい頃からよく現帝に会いに来られていた。前帝は全ての配下に優しく、家族のような宮廷だったことを覚えている。
でも、なんか武官になれなかった頃から様子がおかしくなっていたような…、あれ、なんでだろう?
昨夜の言葉が脳裏によぎる。
僕がそばにいるのが邪魔だったから、武官になれなかったってこと?
聞いてない、全く聞いてない。
なんか話がめちゃくちゃでついていけない。僕の回りで何が起きているんだ?
二人の笑顔が怖い。本当の作戦を教えてくれなかった秀太に軽い殺意を覚えながら、この作戦を許可した現帝にも怒りを覚えながら
僕は従うしかなかった。もうなるようになれって思うしかなくて、でも、僕はまだ気づいていなかった。この弟帝の妃選びに渦巻く黒い陰謀を。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!