第13話

Another3
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2021/02/25 04:06
瑠姫
で、結局なにもしてないわけ?
 後宮にきた康祐は開口一番叱られていた。皇太弟の毒の話はすでに後宮に知れ渡っていた。それもそのはず、皇太弟と見合い予定の者を見定める食事会の出来事であった。
康祐
いや、しようとは思うただ手がなにも思い付かない
瑠姫
でしょうね。秀太は?なんか情報は掴んだの?
秀太
いえ、すみません。事件の発生状況くらいしか…
瑠姫
もー使えないわね
秀太
使えないって… 
瑠姫
なんかいった?
秀太
いーえ、なにもいってません!
康祐
まーまーまー、事件とは関係ないんだけどさ
瑠姫
ん?
康祐
親父、もしかしたら家臣に殺されてるかもしれないんだよね
瑠姫
………
秀太
………
瑠姫
はぁ?
 康祐の言葉に一瞬固まり、瑠姫と秀太が顔を見合わせる。
秀太
今言うことですか?
瑠姫
隣国のだれかが毒盛ったんじゃないかって話だったじゃない!誰がお義父様を?
康祐
わかんないんだけど、なんか最後にしゃべったときそんな話だった気がするんだよね。自分が死ぬのは病気だからって言うし。
瑠姫
ちょっとまって、花蓮はどう思う?
花蓮
私ですか?その断片だけではわかりませんが、もし先帝様の命をお奪いになったかたが見つからずまだ勤めておられるなら、勝就様と康祐様を仲違いさせようとするでしょうね。
康祐
仲違い…
花蓮
あまり推測だけで話すのはよくありませんが、毒見が食べて平気だったものが勝就様が召し上がられて毒だった場合、どなたが犯人だと思われます?
瑠姫
うーん、誰だろ?食事を運ぶ侍女かしら?
秀太
皇后さま、それっておそらく、自作自演の話しじゃないです?
康祐
待てよ、勝が自作自演で毒なんか飲むはずないだろ
瑠姫
自作自演でやすくんの所為にしようとしてるっていう筋書きってことかしら?
花蓮
という、誰かのシナリオです
秀太
いやいやいや、怖いよそれ、花蓮さん
瑠姫
やすくん、悔しくないの?
康祐
え?
瑠姫
そんな女官が思い付くようなシナリオで勝手に動かされてんのよ?
秀太
でも、花蓮さん頭いいし…
瑠姫
国を背負ってるんでしょ?最低限私と皇太弟あの子は守ってくれないと
康祐
わかってる、わかってるけど、敵が見えないんだよ
瑠姫
見えなくて当たり前じゃない、だから味方で固めなくちゃ
康祐
でも俺には秀太しか
瑠姫
いたでしょう?気がついたら引き離された取って置きの切り札が
秀太
…あ…
瑠姫
あん時何て言ったか覚えてる?『文哉には迷惑書けたくないんだ』ってカッコつけちゃってさ。
康祐
だってあの時は、みんな…
 康祐は自分の言おうとしたことを飲み込んだ。そして、頭を抱えた。
康祐
じゃぁ、もしかして
瑠姫
多分、今貴方の本当の味方は秀太だけでしょう
康祐
うわー、まじか…
瑠姫
だから味方を探すんじゃなくて、味方を作らなきゃいけないの。
康祐
だからってあいつ呼び戻したところで、世界は変わらない
瑠姫
世界を変えるの。それはひとりの力じゃ無理。でも…
 瑠姫はふと言葉を止め、横にたっている花蓮に手招きをし何やら耳打ちをする。楽しそうに耳打ちする姿に康祐と秀太は引いていた。瑠姫がこういう表情をするときはなにか良からぬ事を思い付いたときだ。小さい頃からそれは何度となく経験していた。そして、瑠姫と花蓮の計画は絶対遂行されなくてはいけないものだった。
瑠姫
ふみちゃんを女官にしましょう

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