第15話

Another5
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2021/03/11 09:37
 大量の書類の山に面倒な気持ちと戦いながら目を通し判子を押す。もう決まったことで自分にはなにも言う権限はない。ただ、判子を押すだけの簡単なお仕事。康祐はそう思いながらも判子を押していた。書類のなかには懐かしい名前もちらほら。時が経ち徐々に遊んでた従者の子達が仕事に就いているのだ。
康祐
あぁ、味方は探すもんじゃなくて作るもんだな
 康祐は少し考えて部屋を出るそのまま庭に出て、辺りを見回す。部屋の前に立つ衛兵がスッと体を正す。
康祐
トモ、だよな?
誠明
陛下、私は一介の衛兵ゆえ名前など
康祐
助けてほしい。こんなこと言うのも変かもしれないけど、昔みたいにまた…
誠明
…私たち軌道隊はあの時解散しました。もう…
康祐
申し訳なかった。全て俺が悪かった。また軌道隊として勤めてくれないか?
 軌道隊は皇太子だった頃に父帝に頼んで構成してもらった隠密部隊。父が亡くなり帝になった時に解散を言い渡した、つもりだった。
誠明
…だーってさ
ヒチョ
仕方ないなぁ、ねぇ
 二つの影が飛んできた。ヒチョとゆーごだ。
ゆーご
解散って言われたけど秀太がそのままで良いって言うからそのまんまだったよ
康祐
え?秀太が?
誠明
ほぼ秀太直属部隊になってましたけど
ヒチョ
秀太は人遣いが荒いからね
ゆーご
ほーんと、潤は優しいからなんでも聞いちゃうし
 3人はフフッと笑い目配せをする。そして三人とも片膝をつく。
ヒチョ
陛下直属隠密部隊軌道隊、陛下のためにここに忠誠を誓います‼️
康祐
ちょ、ちょっと待って。いいから立って。
ゆーご
あれ、ダメだった?
康祐
嬉しいけど、そんなに偉くないんだよ。まぁ立場は偉いかもしれないけど…
ヒチョ
偉いに決まってるじゃない、帝なんだから
康祐
でも、嬉しいわ。秀太に言われたからかもしれないけど、俺を待っててくれたってことだよな?
誠明
そうなるね
ゆーご
まぁね
ヒチョ
僕たちが必要ってまた思ってもらえたなら良かった
康祐
すまなかった。でも、ありがとう
ゆーご
今はヨンフンくんが一応皇太弟様を見守ってるよ。ただ、結構ガードがキツいみたいでなかなか寄れないみたい
ヒチョ
最悪の事態にはならないように伝えてあるよ
康祐
難しいかもしれないが、誰か後宮に潜んでほしい。あと、文哉の影武者と…
ゆーご
待って、なんで僕見るの?え、ちょっとまって。影武者?
誠明
後宮の方
ゆーご
えー、やだよあんな女ばっかのとこ。
ヒチョ
僕も行くから一緒に行こう、ゆーご
ゆーご
えー、仕方ないなぁ
誠明
しゅんやを影武者にユンドンと向かえば…
ヒチョ
トモはそのまま陛下を守ってよ
誠明
そうだね、俺はこのまま衛兵のふりしようか
康祐
ありがとう。ほんと助かる
ゆーご
給料あげてね
康祐
わかってる、もちろんそれは…今給料って?
ヒチョ
多分秀太のポケットマネー
 秀太がやけに給料よこせって言ってたのはこういう事だったのかと納得しつつも7人の給料出すなんてあいつもなかなか良いところあるなぁと見直していた。まぁ、常に自分のそばにいてお金も使うことがなかったのかもしれないがそれでも、良い部下を持ったと心底思っていた。
康祐
秀太がいて良かったよ
『全部、僕のお陰ですからね?』
 とにっこり笑う秀太が見えた気がした。

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