前の話
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昔からお転婆というか、男勝りというか、元気な性格で周りを困らせていた私が、もう大学生かぁ…
必死で勉強して受かった高校を卒業してはや1ヶ月。スーツに身を包んで向かうのは、大学の入学式である。
もう生まれてから19年目かぁ。辛いこともあったけど、なんだかんだ楽しいことの方が多くて、笑えてきちゃう気もする。
なんだか感慨深くなるなぁ…
と、少し感傷に浸っていたのに。
朝からわいわいするこの6人の奴らは、昔からずーっと一緒にいる私の幼馴染。
ジェルくんはいっつも面白くて私を笑わせてくれる。すっごい可愛い彼女の茜ちゃんが大好きで、最近はずっと惚気話を聞かされている。
でもまぁ、幸せそうで嬉しいから聞いてるけど。
1番身長が高くてよく高い高いとかしてもらっていたから、お父さんって呼んだことある。
ちょっとノリは軽いけどいい人だ。
るぅちゃんは優しくて頭が良くて、受験の時は大変お世話になりました…ありがとう…
中々のスパルタ授業だったおかげで無事に受かったけど、他の子の前ではそんなこともないらしい。
生徒会長もやってたしっかり者だけど、たまーに怖い時がある。たまーに。
莉犬くんはお寝坊さんだったりして、同い年だけど可愛い弟って感じだ。
愛されキャラっていうか、色んな人に好かれてる。異性の友達も多い。
忘れ物激しいし、ちょっと天然?なせいでみんなにいじられていて、本人もそれを気に入ってる。素直で話しやすい。
なーくんはみんなのお兄ちゃんだ。優しいし説得力があって、なーくんの言うことなら素直に聞けちゃう。
とにかく面倒見が良いから、なーくんを慕っている後輩はめちゃめちゃ多いし、礼儀正しい姿を見て先輩も1目置いている。
人を惹きつける何かがある自慢の幼馴染。
さとみくんはよく周りを見ていて小さな変化にもすぐ気づく。だからモテる。
なーくん、ジェルくんとは同い年で、私たちの一個上。
適当そうに見えてすごく頼りになるし要領もいい。
ちょっと意地悪だしすぐふざけるけど、大事な時は真剣に話を聞いてくれる。
ころちゃんは根は真面目で愉快な感じだけど素直じゃない。喧嘩してもなかなか謝ってくれなくて、3週間も口を聞かなかったことがあるくらいだ。
何故かよく同じクラスにもなるし、今回も学科が一緒。なんだかんだ1番過ごした時間は長いかも。
その分、よく言い合いもするけど…
思わず声が揃って、睨み合いながら走った。
ここから大学まで電車で20分。駅からはすぐだけど、次の電車に乗り遅れたら間に合わない。
そう、私とこの6人は、生まれる前から同じ団地の同じ階の幼馴染。しかも1階につき7部屋までなので、丁度全員が同じ階。
親が近所づきあいしているうちに、ほとんど歳の違いのない私たちはよく遊ぶ仲になり、いつの間にか、幼稚園、小学校、中学校、高校、さらにはこれから通う大学まで、ずーっと同じなのだ。
今年で19年目になるが、未だにずっと仲良しでいられている。
こんなこときっと普通じゃない。奇跡に近い。
憎まれ口を叩いたって、これからも、ずっと一緒に。
…好きな人に想いも伝えず、幼馴染のままで。
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パチパチパチ…と拍手の音が響く。
何とか席につき、同じように拍手をして息を落ち着かせた。
司会が式を進め、開式の言葉から理事長の話へと移る。
ひそひそ3人で話している間に、入学式は終わった。
理事長が私たちの話を聞いていたかどうかは結局分からず仕舞いでちょっと怖いし、座りっぱなしで肩は凝ったけど、明日から頑張れそうな雰囲気だった。
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おなかいっぱい食べた帰り道。
成人目前にして、まだこの6人といられるって、すごい素敵だなぁ…
どういうこと?なんでそうなるの?
はてなマークが頭に浮かぶ中、詳しく話を聞くと、新生活に向けて6人は大きな家を借りていて、そこに一緒に住む準備をしているらしい。
とはいっても荷物もほとんど運び終わっているため、今日からそっちに住むという。
一緒の学校だし、隣の部屋同士で朝から起こし合いに行って一緒に登校するのも面倒だろうと、シェアハウス生活をするという考えに至ったわけだ。
ただ借りたはいいが部屋がひとつ余っていて、その部屋の争奪戦をしているので、出来れば私にその部屋を使って欲しいとのこと。
正直、大学生にもなったわけだから実家は出たい、と思っていた私にはいい話なのだが…
ころちゃんに言われた言葉がムカついて決めちゃったけど、なんか楽しそうだし、何よりみんなと一緒にいたいのは本当だから。
それに…
"好きな人"に意識しないなんて言われたら悔しいじゃん。
確かにずっと一緒にいるけど、私はずっところちゃんのことが好きなのに、なんで気づかないの。この鈍感。
この大学の4年間の間に、絶対絶対意識させて、好きにさせるんだから…!
ひとつ屋根の下、同じ空間でずっといられる。
必ずころちゃんに意識させてやる…!!!
To be continued…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。