硬く目を閉じてどうにかこの時間をやり過ごそうとしていた私だけど 、
あいつの顔が近付いてきて 、
唇が首筋に触れた時 、
我慢の限界だった 。
それと同時に離れる私達の身体 。
そうやって 、
いつも人の心を見透かすような目してさ 。
そんな目で私を見ないでよ 。
そんな優しく扱わないでよ 。
そうやって何回も 、裏切られてきたんだから 。
いい人だと思わせて騙そうなんて甘いんだよ 。
なんでこいつ 、いちいち偉そうなんだろう 。
家族でも親戚でも友達でもなんでもない 、
ただ同じ業界でちょっと顔見知りってだけの関係なのに 。
なんだこいつ 。
先生かよ 。
でもなぜか 、
何も言い返せなくて 、
あいつの真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうになった 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!