30分くらい寝たかな 。
ちょっと眠気も無くなってこれでちゃんと収録乗り切れそう 。
スタジオがあるビルに入るとスタッフさんに案内されて 、私の名前が印刷された紙が貼ってある部屋の前に案内された 。
10分後には打ち合わせ 。
急いでメイクして髪もまとめとかなきゃ 。
楽屋を出て収録するスタジオへ足を運ぶ 。
スタジオの思いドアを開けると 、既に何人かの出演者が来てて 、軽く会釈をしながら自分の席へ向かう 。
低い通る声に顔を上げると 、
この前の 、あいつだった 。
私の隣に座ったと思えば耳元で囁く 。
思わず睨み付けるとクスッと笑うこの男 。
ほんとにウザい 。
お前のせいだわ ! って言いそうになる気持ちを必死に抑えて 、下唇を噛み締める 。
いちいちムカつくんだよね 。
何だろう 、顔 ?
馬鹿にしたような 、嘲笑ってるような ?
例えるなら 、意地悪なお兄ちゃんが妹を虐めて楽しんでるような 、そんな感じ 。
" 仲良くなんてしねえよ "
そう言おうと思ったけど 、
これは仕事 。
私情を挟んではいけない 。
言いたい事は山ほどあるけど 、それは収録が終わってからでいいや 。
よし 、よく言った私 。
せっかく私が下に回ってやったのに 、この男はいつまでも喧嘩をふっかけてくる 。
ついに我慢できなくなった私は 、他の出演者に見えないようにあいつの足を踏みつけた 。
分かりやすく歪む顔 、そして私を睨み付ける 。
今日1日 、楽しくなりそう 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!