夕方
『7時過ぎには、家着くと思う』
俺は、そう送った。
いつもならすぐにつく既読が、
今日はつかなくて、
少し心配になったが、
旅行で疲れて眠っているのだろうと、
さほど気には止めなかった。
それに、俺もこの後会議がある。
そんなずっとLINEを見ている訳にもいかない。
夜には会える。
俺は、少しウキウキしていた。
一方のあなたは…
2時間前…
ドンッ…
車道に押された。
そう分かった直後、
ププーーー!!!!キーーーー!!
大きな音と共に、
私は、地面に叩きつけられた。
車に跳ねられたのだ。
その数秒後、
身体中をハンマーで
叩かれるような激通が走り、
あぁ…死ぬ…
そう感じた。
横には、私の血がはねているのが見える。
その直後私は走馬灯を見た。
親友と海に行った時のこと。
7人で旅行に行ったこと。
すみれと京都で遊んだこと。
どれも今思えば、凄く楽しかった。
これが、楽しいっていうんだな…
ずっと楽しんでたな…
そう思った。
でも、その走馬灯の半分以上を占めていたのは、
他でもない、廉だった。
廉とご飯食べてる時、
廉と寝てる時、
廉と遊園地に行った時、
廉の笑った顔…
その色んな情景が思い浮かぶ。
やっぱり私、廉のことが好きなんだな…
そう思った。
そして、徐々に瞼は重くなっていき、
私の視界は、暗転した。
午後7時
ガチャ
家に入ると、明るいはずのリビングは、
昨日と同じで、暗く、
静まり返っていた。
寝室、リビング、
全ての部屋を見ていく。
でも居ない。
なぜ?
1泊2日で、昼には帰ってくるって話だった。
もう夜の7時。
帰ってきているはず。
あなたからの連絡はない。
LINEの既読もつかない。
おかしい。
その時、ふと家電に、
留守番電話が入っていたのが見えた。
ピッ
俺はボタンを押して、
その留守電を、再生した。
「再生します」
その声の後に聞こえたのは……
『○○病院の佐藤と申します。
永瀬さんのお宅でしょうか?』
『永瀬あなたさんが、事故で運ばれました。』
『至急お越しください。』
「留守電を1件再生しました。」
部屋には、その声が響き渡った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。