第43話

43話 走馬灯
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2020/06/02 09:19



夕方




『7時過ぎには、家着くと思う』





俺は、そう送った。




いつもならすぐにつく既読が、

今日はつかなくて、

少し心配になったが、

旅行で疲れて眠っているのだろうと、

さほど気には止めなかった。






それに、俺もこの後会議がある。





そんなずっとLINEを見ている訳にもいかない。











夜には会える。





俺は、少しウキウキしていた。


































一方のあなたは…




2時間前…





ドンッ…




車道に押された。



そう分かった直後、

ププーーー!!!!キーーーー!!





大きな音と共に、

私は、地面に叩きつけられた。




車に跳ねられたのだ。





その数秒後、

身体中をハンマーで

叩かれるような激通が走り、

あぁ…死ぬ…

そう感じた。




横には、私の血がはねているのが見える。









その直後私は走馬灯を見た。





親友と海に行った時のこと。

7人で旅行に行ったこと。

すみれと京都で遊んだこと。




どれも今思えば、凄く楽しかった。



これが、楽しいっていうんだな…



ずっと楽しんでたな…




そう思った。














でも、その走馬灯の半分以上を占めていたのは、

他でもない、廉だった。






廉とご飯食べてる時、

廉と寝てる時、

廉と遊園地に行った時、

廉の笑った顔…






その色んな情景が思い浮かぶ。







やっぱり私、廉のことが好きなんだな…















そう思った。








そして、徐々に瞼は重くなっていき、

私の視界は、暗転した。
















































午後7時




ガチャ





永瀬  廉
永瀬 廉
ただいま…?
永瀬  廉
永瀬 廉
えっ?



家に入ると、明るいはずのリビングは、

昨日と同じで、暗く、

静まり返っていた。





永瀬  廉
永瀬 廉
あなた…?寝てる?



寝室、リビング、

全ての部屋を見ていく。









でも居ない。










なぜ?



1泊2日で、昼には帰ってくるって話だった。







もう夜の7時。




帰ってきているはず。







あなたからの連絡はない。





LINEの既読もつかない。







おかしい。





その時、ふと家電に、

留守番電話が入っていたのが見えた。










ピッ



俺はボタンを押して、

その留守電を、再生した。





「再生します」


その声の後に聞こえたのは……







『○○病院の佐藤と申します。
永瀬さんのお宅でしょうか?』

『永瀬あなたさんが、事故で運ばれました。』

『至急お越しください。』











永瀬  廉
永瀬 廉
は…?




「留守電を1件再生しました。」





部屋には、その声が響き渡った。






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