帰ってきてから最初に見るのは、
リビングのドア。
いつもなら明るいはずのリビングが、
今日は静まり返っていた。
そして、
“おかえり”
その声も聞こえない。
いつの間にか、家に帰ってくると、
あなたが居る。
それが当たり前になっていた。
急に旅行に行って、
ある意味、俺の前から急に消えた。
それが、こんなにも寂しいなんて、
思いもしなかった。
これが好きということなら、
俺はもうとっくの前から、
あなたに落とされていたのかもしれない。
たった1日。
明日の昼には、戻ってくる。
明日、帰ってきた時には、
いつものように、
料理を作って待っててくれる。
俺は寝る準備をして、
久しぶりの1人のベットに寝転んだ。
ボソッと、小さく呟いた。
一方のあなたは…
また、寝付けずにいた。
横のベットからは、
スーハー…と寝息が聞こえるが、
私は、廉を思い出していた。
いつもなら、シングルのベットで、
2人で寝ているから、狭いぐらいだけど、
“すぐ隣に廉が居る”
そんな安心がある。
いや、確かに今だって、
隣にすみれは居る。
でも、廉とは何か違って…
廉が隣に居ると、
私はどこか安心しきっていた。
普段なら隣に居る廉から、
少し甘くて、でも男くさくて……
そんな、いい匂いがする。
普段……
私は、廉を必要としていた。
彼を必要としていて、彼と居たい。
これが、友達としての感情じゃなく、
恋愛感情?
だとしたら私は、
相当廉のことが好きなのかもしれない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。