ポウセ童子が叫びました。
天の野原はしんとして返事もありません。
西の雲はまっかにかがやき蠍の眼も赤く悲しく光りました。
光の強い星たちはもう銀の鎧を着て歌いながら遠くの空へ現われた様子です。
下で一人の子供がそっちを見上げて叫んでいます。
チュンセ童子が
と云いました。
蠍が哀れな声で、
と云います。
下で別の子供が叫んでいます。
もう西の山はまっ黒です。
あちこち星がちらちら現われました。
チュンセ童子は背中がまがってまるで潰れそうになりながら云いました。
ポウセ童子が
と云いながらとうとうバッタリ倒れてしまいました。
蠍は泣いて云いました。
この時水色の烈しい光の外套を着た稲妻が、向うからギラッとひらめいて飛んで来ました。
そして童子たちに手をついて申しました。
童子たちは叫びました。
そして二人は一緒に稲妻のマントにつかまりました。
蠍が沢山の手をついて平伏して薬をのみそれから丁寧にお辞儀をします。
稲妻がぎらぎらっと光ったと思うともういつかさっきの泉のそばに立って居りました。
そして申しました。
双子のお星様たちは悦んでつめたい水晶のような流れを浴び、匂のいい青光りのうすものの衣を着け新らしい白光りの沓をはきました。
するともう身体の痛みもつかれも一遍にとれてすがすがしてしまいました。
と稲妻が申しました。
そして二人が又そのマントに取りつきますと紫色の光が一遍ぱっとひらめいて童子たちはもう自分のお宮の前に居ました。
稲妻はもう見えません。
二人はお宮にのぼり、向き合ってきちんと座り銀笛をとりあげました。
丁度あちこちで星めぐりの歌がはじまりました。
「あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の つばさ
あおいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたい
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした ところ。
小熊のひたいの うえは
そらのめぐりの めあて。」
双子のお星様たちは笛を吹きはじめました。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。