第12話

1泥棒
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2020/11/28 03:22
貴方を好きになった。
優しくて、素敵な笑顔を貴方を。
友達にはやめときなと言われた。彼には噂があったからだ。付き合ってもすぐ別れる。「1泥棒」という噂が。
それでも私は貴方を信頼していた。慣れなくて、不安だったけど、貴方に1をあげたいと思えた。
でも、最初に見た彼と今の彼は違っていた。性格も、何もかもが。

私は優しい貴方に惚れたはずなのに、何故かいつの間にか、貴方に惚れていて。
性格も顔も、どうでも良くなった。貴方が好きになった。自分でもよく分からないほどに。
だから貴方に…………







1をあげたの。
幸せだった…。貴方がくれたのが1じゃないとしても別に良かった。
噂なんて少しも信じてなかった。貴方に2をあげれるって信じてたから……。
でも、噂は本当だった。貴方はそれ以上をくれなかった。
なんでなの?悲しくてたまらなかった。

信じてたのに。どうして?酷い。2をあげちゃ駄目?
………………………………悲しい。
何故あなたじゃないと駄目なのか。自分でも分からなかった。
ただ、悲しかった。
1を奪われた。1だけを、責任も何も感じず、貴方は奪っていった。
1泥棒、その通りだ。それでもまだ、好きなのだ。

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