いつのまにか仲良くなっていたトントンとロイバァ。
それを見て軽く嫉妬している自分を認めようとしない元幹部たちがいる。
そんな会話をしてるとは知らずにトントンは肩にルストを連れて下へ降りて行った。
下は食糧、火薬、掃除道具にロープや工具などの道具が保管されている。また、小さな牢屋が一つ。そして、大砲が数台と。甲板には三つの大砲、下には六つ。
舵を取りながらそうな話をしている2人に睨みつけるグルッペン。しかし、2人は動じる事なく笑った。
チーノはロイバァの元へ小走りで向かう。
ショッピとトントンはじっと甲板をみる。
狂犬たちはいつものように喧嘩しており、エーミールがそれに巻き込まれている。
2人は笑う。心地よい風が船を吹き抜ける。
トントンの表情は確実に緩くなっている。責任というものが今は無いからだろうか……
トントンの質問に驚く。知っていたのか、と。
トントンはこう続ける。
「ロイバァに聞いた」と。
背中に携えていた戦斧(戦闘用の斧。バトルアックス)を取り出す。
ツノがついた魔女の横顔と何処の国かもわからない文字。
そう告げるショッピは困ったように微笑んだ。彼もまた、呪いで苦しんでいるのだ。
この海賊たちは人より遥かに優しい。グルッペンたちが思っている以上に。
ショッピの言葉に思わず固まってしまうが、すぐに笑みを浮かべて『わかった』と答えた。
それが望みなら、と。
トントンは空を見上げる。青い空。軍にいた頃より広く感じる空。
グルッペンの言葉にトントンは驚く。グルッペンは自分達の国を創りたいという。
トントンはそう言い武器庫へ向かった。
グルッペンの中に、モヤモヤと残る黒いモノ。それは一体なんなのか。彼にはわからない。
鬱先生はグッと拳を握り、動き出す。
向かう先は船長室。
船長室は何故か鍵が開いていた。
変わったライターを懐にしまう。そして、部屋をさった。
彼の目的はロイバァの私物を奪うことのようだった。脅しに使えると考えたのだ。
など、考えながら歩く。
相変わらず、トントンはロイバァと話をしていた。
ロイバァは船首にたち、海を眺める。
グルッペンに言われたことを悩む。1人では大きすぎる悩みだ。
トントンはジッと彼をみた。
鬱先生が隠れているとは知らず、そう告げる。
口元を押さえて、ジッと気配を消す。
ロイバァは黙って、彼の声を聞く。
静かに言った。ロイバァの顔は柔らかく、とても嬉しそうに笑っていた。子供のように、フワリと。
赤い宝石が嵌め込まれた腕輪。
赤い宝石の中には魔女の横顔、その周りの金属部分には細かな文字が連なっている。
トントンは躊躇いなく腕輪を左に装着した。淡く光る赤い宝石。魔女が微笑まんでいるようにみえる。
女の人の声がした。けれど、どこにも居ない。
2人の女の人の声がする。けれど、姿は見えない。
不死?力?
少年のように笑う、ロイバァ。トントンはニコリと微笑み
嬉しそうにそう告げた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!