第12話

elf 夜の会談
328
2021/05/08 11:17
夜の海はひどく暗く、自分たちの船以外何もない。
穏やかな海も夜のせいか少し怖く感じる。

このような雰囲気が苦手なひとらんらんは1人で甲板に出ていた。

慣れない場所で寝るのは困難で、きっと暗殺者だった彼も同じなのだろうと思い外へ出てみた。
街より広いこの海に浮かぶ星は綺麗で思わず見惚れてしまった。
ひとらんらん
ひとらんらん
(故郷はどうなってるんだろう……なんて、わからないけど……)
1人悩んだところで意味はない。
ルスト
ルスト
きー?
足元にやってきた小さな彼に思わず声を上げて驚いてしまうが、彼は逃げたりはしなかった。
ひとらんらん
ひとらんらん
ごめんね?驚かせて。
ここで、何してるの?
ルスト
ルスト
キー!
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
ルストは俺の補助をしているんだ。
ひとらんらん
ひとらんらん
うわっ!!!びっくりした
ロイバァはケラケラと笑う。ルストはトコトコとロイバァの元へ向かい肩へよじ登った。
ひとらんらん
ひとらんらん
って、補助?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
夜の見張りのな。
夜の航海は最も危険なんでな。暗くて何も見えない。故に方角を見失いそうになりやすい。
それによる遭難を防ぐための見張りだ
ひとらんらん
ひとらんらん
なるほど……でも、目印とか無いんでしょう?
難しいじゃないの?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
星が俺たちを導いてくれる。
昼間は風を読み、波を掴む。
夜は星を道標とし渡る。
その目はしっかりと星を見ている。真っ直ぐな貫くような瞳。
ひとらんらん
ひとらんらん
……………ロイバァ…さんは『和ノ国』って知ってる?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
知ってるも何も行ったことあるぞ。
ひとらんらん
ひとらんらん
知らないよね…………って、えぇぇ!?ウソっ!?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
嘘ついてどうする。
証拠あるぞ。ほら、“刀”だ。
黒い鞘の立派な太刀をスッと出してくるロイバァ。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
これもまた、【魔女の涙】でな。
向こうでは『妖刀』と呼ばれていたな。
ひとらんらん
ひとらんらん
刀………鬼切丸だ。それ。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
ほぉ………知っているのか……欲しければやるが。
呪われてしまうぞ?
ひとらんらん
ひとらんらん
トントンも、大ちゃんも覚悟決めたんだもん……もう一度、故郷に行きたいんだ俺。
だから、その刀。頂戴?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
故郷に連れて行け…か。構わんぞ。あそこは面白い。

では、受け取れ。
刀をひとらんらんに渡す。
刀は綺麗で、妖刀と呼ばれる理由がわからないほどだった。
刀は光りを放ち、彼を主と認めるようだった。ロイバァはその光を受けていなかったため呪われなかった。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
選ばれたようだな。
ようこそ、パラディーゾへ。歓迎しよう!

名をくれてやらねばな。
『ファヒター』だ。
ひとらんらん
ひとらんらん
ふふw
よろしくね?キャプテン
ロイバァは彼の故郷に行った時の話をしてみせた。
サクラと言う花が好きだと言う話、人々の警戒心がすごい話。
ひとらんらん
ひとらんらん
ははは!そうだね、異国の人って珍しいから
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
あんなに警戒されるとしょげるぞ
ひとらんらん
ひとらんらん
しょげるんだw
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
うむ(´・ω・)
意外な一面を知れた気がする。
夜は彼らだけが甲板で会話を弾ませていた。
ひとらんらん
ひとらんらん
そうだ、先に言っておかないと。
糸目の中性的な人、いるでしょう?オスマンって言うんだけど……マンちゃんさ、職業柄、人をすぐに疑っちゃうんだ
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
そうか。
ひとらんらん
ひとらんらん
俺が君の仲間になったからきっと、何か聞いてくると思うけど、気にしないでね?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
あぁ、もちろんだ。気にしやしない。
全ての判断は君ら自身に委ねるんでな。
そうニコリと笑った。

ひとらんらんは思う、彼は優しい海賊だ、と。
ショッピ
ショッピ
キャプテン〜交代の時間っす
って、ひとらんさんじゃないですか
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
おう。もう、そんな時間だったのか。
では、残り頼むぜショッピ。
ひとらんらん、今日はもう休め
ひとらんらん
ひとらんらん
了解、キャプテン
楽しい時間は過ぎるのが早く、仕事も順調に終了した。
ひとらんらん、ロイバァは部屋へと戻って行く。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
(はぁ……物好きなやつらばっかだな。チーノとショッピには敵わん……断りにくいことを……)
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
(俺について来ても死なない苦しみがあるだけだと言うのにな………)
彼の悩みはずっと晴れることはないだろう。彼らはロイバァの思っている以上に頑固で、決めた事を絶対に曲げない。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
ばーか
それは何に対してか、ロイバァでもわからない

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