夜の海はひどく暗く、自分たちの船以外何もない。
穏やかな海も夜のせいか少し怖く感じる。
このような雰囲気が苦手なひとらんらんは1人で甲板に出ていた。
慣れない場所で寝るのは困難で、きっと暗殺者だった彼も同じなのだろうと思い外へ出てみた。
街より広いこの海に浮かぶ星は綺麗で思わず見惚れてしまった。
1人悩んだところで意味はない。
足元にやってきた小さな彼に思わず声を上げて驚いてしまうが、彼は逃げたりはしなかった。
ロイバァはケラケラと笑う。ルストはトコトコとロイバァの元へ向かい肩へよじ登った。
その目はしっかりと星を見ている。真っ直ぐな貫くような瞳。
黒い鞘の立派な太刀をスッと出してくるロイバァ。
刀をひとらんらんに渡す。
刀は綺麗で、妖刀と呼ばれる理由がわからないほどだった。
刀は光りを放ち、彼を主と認めるようだった。ロイバァはその光を受けていなかったため呪われなかった。
ロイバァは彼の故郷に行った時の話をしてみせた。
サクラと言う花が好きだと言う話、人々の警戒心がすごい話。
意外な一面を知れた気がする。
夜は彼らだけが甲板で会話を弾ませていた。
そうニコリと笑った。
ひとらんらんは思う、彼は優しい海賊だ、と。
楽しい時間は過ぎるのが早く、仕事も順調に終了した。
ひとらんらん、ロイバァは部屋へと戻って行く。
彼の悩みはずっと晴れることはないだろう。彼らはロイバァの思っている以上に頑固で、決めた事を絶対に曲げない。
それは何に対してか、ロイバァでもわからない
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。