いつのまにか、日は沈み満月の光が船を照らす。
この海賊団には変わったルールがある。
一つ、昼間は船長により与えられた偽名で呼び合うこと。
二つ、夜の間(仲間がいる時に限り)本名で呼び合うこと。
三つ、迂闊に財宝を奪うこと、触ることを禁じる
など。そう言ったルールが存在した。
鬱先生の場合、『大先生』はあだ名で昼間でも呼ぶことは許されている。つまり、彼だけ名が多いのだ。
ルールの大体が呪い対策と、ロイバァは告げていた。
それ以上は語ろうとはしなかった。
衝撃の言葉に思わず間抜けな声が出てしまう。グルッペンは自分自身の考えに嫌気がさしたのだとばかり思っていたのに、彼が自分ににていると言われそんな声が出てしまったのだ。
楽しそうに告げる2人に唖然とする。予想外の言葉に困惑してしまうグルッペン
恥ずかしいのか、今までの嫉妬が馬鹿らしいのか……グルグルと回る思考に頭をかく。
チーノとショッピはドタドタと食堂へかけて行った。
普通の海賊なら船長は料理をせず威張っているだけだろう。けど、この船長は違うようだ。
元々海賊であったシャオロンとゾムが懐かしそうに話す。
そう言いニコリと笑った。
トントンや、鬱先生に見せた笑顔と、どこか違った。少しの警戒。
トントンと鬱先生は笑って、食堂へ向かった。残りのメンバーも遠慮しながら食堂へ足を運んだ。
目の前に並べられた豪華な料理たち。思わず涎が出てしまいそうだ。
ショッピとチーノはすでに席についており、ソワソワと料理を見ている。
口こそ悪いが、彼なりの優しさが見える。全員、先に着けば船長の挨拶が合って賑やかな食事が始まる。
一口、口に運べは高級レストラン並みの美味しさ。
ロイバァの料理は絶品でチーノとショッピが喜ぶ理由がわかる気がする。
そんな事を考えながら、さらっとおかわりをしているゾム。
普段少食なグルッペンや、シャオロンもおかわりを要求しており、取り合いが始まりそうな予感。
その声にみんながコネシマを見る。
手は止まっており、ぼーっとしていた。
チーノの即答に大きな声を上げて否定するコネシマ。
ロイバァは一度考え込む。
淡々と言うロイバァの声には少しの怒りがあった。鬱先生はそれが何故かわかった。
コネシマは咄嗟に腰に隠したダガーを触る。
ロイバァはそれを見逃さなかった。目でショッピに合図をし、ショッピはコネシマの手を拘束した。
平気で嘘を言う鬱先生に呆れるトントンとチーノ、ショッピ。
コネシマはギロリと睨めば、鬱先生は汚い喘ぎをあげていた。
グルッペンはロイバァの言葉に興味を示していた。【魔女の涙】についてである。
ロイバァは答えず、コネシマをじっと見た。
コネシマの後ろから現れた赤髪の女性はゆらりと笑い、ロイバァを見下す。
ショッピとチーノが武器を構えて楽しそうに、狂気的に魔女を見る。
トントンと鬱先生はロイバァを守るように構えた。
魔女は舌打ちを一つ吐き、姿を消した。
コネシマがふらりと倒れそうになるが、ショッピが受け止める。
ロイバァはそう答え、ワインを一口、飲む。いつのまに出したのやら?
ロイバァの言葉に呼ばれた本人たちも驚いている。
本人は今日まで【魔女の涙】について知らなかったからだ。
彼はそう言い食べ終わっていた。
この船の船長は本当に変わっている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!