第11話

zehn もう1人の盗人
843
2021/05/08 01:17
いつのまにか、日は沈み満月の光が船を照らす。
ショッピ
ショッピ
ふぅ……1日、終了
チーノ
チーノ
今日はなんか、忙しかったな
ショッピ
ショッピ
ショッピ
せやな、チーノ
この海賊団には変わったルールがある。
一つ、昼間は船長により与えられた偽名で呼び合うこと。
二つ、夜の間(仲間がいる時に限り)本名で呼び合うこと。
三つ、迂闊に財宝を奪うこと、触ることを禁じる
など。そう言ったルールが存在した。
鬱先生
鬱先生
(なんで、こんなルールがあるんやろ?)
鬱先生の場合、『大先生』はあだ名で昼間でも呼ぶことは許されている。つまり、彼だけ名が多いのだ。
ルールの大体が呪い対策と、ロイバァは告げていた。
それ以上は語ろうとはしなかった。
グルッペン
グルッペン
トントン、鬱。
鬱先生
鬱先生
グルちゃん…どうしたん?
グルッペン
グルッペン
何故、奴の手を取った?
トントン
トントン
ん〜世界が見たいって言うのもある………グルッペンも見せてくれるんは知ってんねん
グルッペン
グルッペン
なら、何故だ?
鬱先生
鬱先生
なんかな、グルちゃんに似てるんよな
あの人
グルッペン
グルッペン
はぁ?
衝撃の言葉に思わず間抜けな声が出てしまう。グルッペンは自分自身の考えに嫌気がさしたのだとばかり思っていたのに、彼が自分ににていると言われそんな声が出てしまったのだ。
トントン
トントン
なんやろ、真逆な考え方はしてるんやけど……冒険譚話す顔が、アンタと似てたんや
鬱先生
鬱先生
そうそう……僕を仲間にするって言う時も
グルちゃんと会った時と同じでさ
楽しそうに告げる2人に唖然とする。予想外の言葉に困惑してしまうグルッペン
グルッペン
グルッペン
な、な!それだけか!?
有無能組
え、せやけど
恥ずかしいのか、今までの嫉妬が馬鹿らしいのか……グルグルと回る思考に頭をかく。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
おーい!お前ら!飯だ!!
ショッピ
ショッピ
え、キャプテン作ったんすか?今日
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
そうだが?
今日は上手く暴れていたようだからな
褒美をくれてやる
新人組
よっしゃぁ!!!!
チーノとショッピはドタドタと食堂へかけて行った。
トントン
トントン
キャプテン、料理できるんすか?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
おう。悪いか?
鬱先生
鬱先生
いや、ギャップを感じて
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
まぁいい。飯だ。
普通の海賊なら船長は料理をせず威張っているだけだろう。けど、この船長は違うようだ。
シャオロン
シャオロン
船長が料理するってなんか、俺らみたいやな
ゾム
ゾム
それは、シッマとシャオロンが料理壊滅的やったからしゃーなしや
元々海賊であったシャオロンとゾムが懐かしそうに話す。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
パラディーゾ海賊団のルール其の五。
『クルーが暴れた日は褒美として船長が何かするべし。』
そう言いニコリと笑った。
トントンや、鬱先生に見せた笑顔と、どこか違った。少しの警戒。
トントン
トントン
ふはっ!面白いなやっぱ!
鬱先生
鬱先生
ほん、ソレ!
トントンと鬱先生は笑って、食堂へ向かった。残りのメンバーも遠慮しながら食堂へ足を運んだ。
目の前に並べられた豪華な料理たち。思わず涎が出てしまいそうだ。
ショッピとチーノはすでに席についており、ソワソワと料理を見ている。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
本来ならば『働かざるもの飯食うめからず』だが、今回はショッピとチーノが活躍したんでな。
食うことを許そう。明日から働いてもらう。居候共
口こそ悪いが、彼なりの優しさが見える。全員、先に着けば船長の挨拶が合って賑やかな食事が始まる。
一口、口に運べは高級レストラン並みの美味しさ。
ゾム
ゾム
美味い………
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
光栄だな。
ロイバァの料理は絶品でチーノとショッピが喜ぶ理由がわかる気がする。
ゾム
ゾム
(こりゃ、略奪も頑張るわ……これが褒美やったら……)
そんな事を考えながら、さらっとおかわりをしているゾム。
普段少食なグルッペンや、シャオロンもおかわりを要求しており、取り合いが始まりそうな予感。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
ところで、味は好みではなかったのか?
ショッピの先輩とやらよ。
その声にみんながコネシマを見る。
手は止まっており、ぼーっとしていた。
コネシマ
コネシマ
え、あ………知らん奴の料理なんてって思ってな……
チーノ
チーノ
嘘やね
コネシマ
コネシマ
はぁ?嘘ちゃうわ!!
チーノの即答に大きな声を上げて否定するコネシマ。
チーノ
チーノ
嘘やよ……ごめんな?俺、『嘘』がわかるから
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
チーノの言うことに間違いはないのでな。

お前、味を感じないのだろう?
コネシマ
コネシマ
…………違う
チーノ
チーノ
これも嘘やね。
キャプテンの質問に肯定やわ。
ロイバァは一度考え込む。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
そう言えばな。ライターの他にもう一つ盗まれていてな。

それの呪い効果が『心なき者に味覚要らず、心ありし者に視覚要らず、殺意ある者に聴覚要らず』と言うものだった筈だ。
淡々と言うロイバァの声には少しの怒りがあった。鬱先生はそれが何故かわかった。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
そのダガーはどこで手に入れた?
コネシマ
コネシマ
!!
コネシマは咄嗟に腰に隠したダガーを触る。
ロイバァはそれを見逃さなかった。目でショッピに合図をし、ショッピはコネシマの手を拘束した。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
はぁ……ったく、盗人ばっかだな?鬱?
鬱先生
鬱先生
イヤァ?ナンノコトカナ?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
コネシマと言ったか?それは、【魔女の涙】と言う呪いの財宝だ。
どうする?その呪いは持ち主が死ぬしか解ける方法はないぞ?
このまま、海に身を投げるか?それとも、そこのショッピに殺されるか?
鬱先生
鬱先生
それか、こっち側へ来るかやな。
僕も呪われてしもてね?彼について言って解いてもらおうって思っとるんよ〜
平気で嘘を言う鬱先生に呆れるトントンとチーノ、ショッピ。
コネシマはギロリと睨めば、鬱先生は汚い喘ぎをあげていた。
グルッペンはロイバァの言葉に興味を示していた。【魔女の涙】についてである。
コネシマ
コネシマ
潔く死を選んだるわ。お前如きの仲間になるくらいやったらな!!!
ショッピ
ショッピ
殺していいっすか?キャプテン
ロイバァは答えず、コネシマをじっと見た。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
いや、殺すな。客人のようだ。

なぁ、魔女よ。
心理の魔女
心理の魔女
チッ……バレないと思ってんけど…
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
バレバレだ。なんせ、俺の目は千里を見るのでな
心理の魔女
心理の魔女
あぁ、アイツか。ウチ、嫌いな子やわ。
コネシマの後ろから現れた赤髪の女性はゆらりと笑い、ロイバァを見下す。
心理の魔女
心理の魔女
ウチらを集めてどないするん?海賊さん?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
お前たちを奈落へ導いてやろう。
成仏したがっているようなんでな。さて、そのワンコを返してもらおう。
心理の魔女
心理の魔女
嫌やって言うたら?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
奪うまで、だ。
ショッピとチーノが武器を構えて楽しそうに、狂気的に魔女を見る。
トントンと鬱先生はロイバァを守るように構えた。
心理の魔女
心理の魔女
じょーだん……返しますよーだ。
大人しく呪ってあげるわ、ガキども
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
ガキ……か、そのガキに封じられるお前はさぞ見ものだろうな?
魔女は舌打ちを一つ吐き、姿を消した。
コネシマがふらりと倒れそうになるが、ショッピが受け止める。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
全く、めんどくさいものばかりだな?お前ら。
船長室には入るな。絶対。
グルッペン
グルッペン
質問だ!!海賊よ!!
【魔女の涙】とは一体なんだ!!それを集めてどうするんだ!?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
【魔女の涙】とは呪われた秘宝の総称だ。俺を含めパラディーゾ海賊団は呪われている。
そこのコネシマとやらも俺の管理していた【魔女の涙】を盗んだようでな。呪われてしまった。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
呪いを特には死ぬしかない。しかし、俺は死ぬ事を許されない。
不死の呪いがかかっているんでな。俺の仲間となった者も、だ。
だから、【魔女の涙】を集めまとめてアトランティスに封印する。
それが、俺たちの目的だ。
ロイバァはそう答え、ワインを一口、飲む。いつのまに出したのやら?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
よくよく、見れば呪われている奴多いぞ。お前ら。
グルッペン
グルッペン
は?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
そこの、『天』の布の奴。紫のストールの奴、目の色素が薄い奴とかな?
ロイバァの言葉に呼ばれた本人たちも驚いている。
本人は今日まで【魔女の涙】について知らなかったからだ。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
今日は終いだ。
明日見てやる
彼はそう言い食べ終わっていた。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
それと、皿洗いと残りの片付けは最後に食ったやつだからな?
夜の見張りは今日は俺がする。お前らは休め。
ショッピ
ショッピ
はーい!キャプテン!
チーノ
チーノ
部屋どうする?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
お前らで決めろ
新人組
りょーかい
この船の船長は本当に変わっている。

プリ小説オーディオドラマ