船を出す準備は着々と進んでいき、その時が来た。
船が動く。風が背中を押す。
オークション会場に居た者たちは港で足止めされていた。
船は今、大海原へ。
船首ギリギリに立ち海を見るロイバァは、何処か楽しそうな顔をしている。
鬱先生はロイバァに問う。
彼らチラリと鬱先生を見て、また正面を見た。
シャオロンがそう声を掛ければ船首から降りて来た。
淡々とそう告げたロイバァ。
ロイバァはそう言い船長室へ向かっていった。チーノは海図の確認、ショッピは舵。それぞれ仕事場に付いているようだ。
海図と羅針盤を使い目的地へ向かう船。
果てしなく続く海、海、海。
そう言いチーノは再び海図を見た。
普通の地図とは違い細かに描かれた世界地図。
元幹部たちはソワソワしていた。どうやって逃げるか。はたまた、ここに居てもいいのか、と。
ゾム、シャオロン、コネシマは特に逃げたがっていた。
グルッペンもオスマンも、ひとらんらんも警戒心を強めている。
唯一、何故かトントンだけは警戒心を緩め、興味津々に船を見ている。
あの警戒心が強く鬼のような書記長が…だ。
遠目に見ている鬱先生とロボロ。
トントンはそんなことを気にせず船長室へ向かった。
船長室の扉を
コンコンとノックすれば『入れ』と低い声が聞こえる。
部屋に入れば、右側には大きな海図が貼ってあり、左には扉が一つある。広い部屋だ。
ソワソワと聞くトントンにクスリと笑うロイバァ。
トントンの質問にロイバァは普通に説明をしてくれた。
【魔女の涙】。それは、魔女の呪いが込められた財宝のこと。
必ず古代の言葉と、女性のエンブレムが彫られており、手に取ったものを呪うという宝。
ロイバァはそれを集め、誰の手にも取られないように海に捨てると言うことをしているのだ。
そう、カトラスを見せる。
悲しそうに笑いそういうロイバァ。
剣をしまい、トントンをみる。
トントンは思う……この船長は誰よりも仲間思いの海賊なのだ、と。自分が呪われているにも関わらず仲間を呪ってしまったことを悔い、懺悔しているのだ。
ロイバァの言葉に驚くトントン。
何故、バレたのかと。
チーノはトントンに軍事のことを教わっていたため少しだけだがトントンの過去を知っている。ロイバァの言葉に納得する。
それから、ロイバァはトントンに自身の冒険譚を聞かせた。
山岳に位置する国の話、海の伝説、呪いの海峡、様々な国の食物。
ロイバァは楽しそうに語って見せた。トントンには新鮮なことで、彼も楽しんでいた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!