第8話

sieben   大海原へ
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2021/05/07 01:39
船を出す準備は着々と進んでいき、その時が来た。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
よし。準備はいいな?
お前ら!!出航だ!!!
新人組
おー!!!
船が動く。風が背中を押す。
オークション会場に居た者たちは港で足止めされていた。
船は今、大海原へ。
船首ギリギリに立ち海を見るロイバァは、何処か楽しそうな顔をしている。
トントン
トントン
すごいな………
鬱先生
鬱先生
何で、僕らを助けたん?
海賊さん
鬱先生はロイバァに問う。
彼らチラリと鬱先生を見て、また正面を見た。
シャオロン
シャオロン
おい、シカトかよ
シャオロンがそう声を掛ければ船首から降りて来た。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
言っておくが。俺は貴様らなど興味が無い。
イロニーとガオナァが『俺の宝だ』と言ったから俺は手助けをしただけだ。
イロニーとガオナァの船長命令違反だ。
淡々とそう告げたロイバァ。
チーノ
チーノ
すんません!キャプテン
どうしても、ね
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
知っている。
お前らを仲間と認めていた奴らだ。お前らの好きにしろ。
ロイバァはそう言い船長室へ向かっていった。チーノは海図の確認、ショッピは舵。それぞれ仕事場に付いているようだ。
チーノ
チーノ
あ。イロニー、このまま西や。
ショッピ
ショッピ
りょーかーい
海図と羅針盤を使い目的地へ向かう船。
果てしなく続く海、海、海。
トントン
トントン
な、チーノ……どこへ行くん?
チーノ
チーノ
………あぁ!俺か!
ごめん、昼間は【ガオナァ】って呼んでくれん?
トントン
トントン
え、あ、うん
チーノ
チーノ
で、何処へ行くかって?
俺らはキャプテンの指示に従ってるだけやから詳しいことはまだわからんのよ。
知りたかったら船長室へ行ってみ?
そう言いチーノは再び海図を見た。
普通の地図とは違い細かに描かれた世界地図。
元幹部たちはソワソワしていた。どうやって逃げるか。はたまた、ここに居てもいいのか、と。
ゾム、シャオロン、コネシマは特に逃げたがっていた。
グルッペンもオスマンも、ひとらんらんも警戒心を強めている。

唯一、何故かトントンだけは警戒心を緩め、興味津々に船を見ている。

あの警戒心が強く鬼のような書記長が…だ。
ロボロ
ロボロ
トントン………一応、敵の拠点やでここ
鬱先生
鬱先生
はしゃぐような場所やないよな
遠目に見ている鬱先生とロボロ。
トントンはそんなことを気にせず船長室へ向かった。
船長室の扉を
コンコンとノックすれば『入れ』と低い声が聞こえる。

部屋に入れば、右側には大きな海図が貼ってあり、左には扉が一つある。広い部屋だ。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
どうした?
トントン
トントン
え、あ。その、何処へ行ってるんか気になって……
ソワソワと聞くトントンにクスリと笑うロイバァ。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
名もない島だ。そこに【魔女の涙】があるとコンパスが示してな。
確かめに行く。
トントン
トントン
【魔女の涙】って、何ですか?
トントンの質問にロイバァは普通に説明をしてくれた。
【魔女の涙】。それは、魔女の呪いが込められた財宝のこと。
必ず古代の言葉と、女性のエンブレムが彫られており、手に取ったものを呪うという宝。
ロイバァはそれを集め、誰の手にも取られないように海に捨てると言うことをしているのだ。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
俺は何も知らずに呪われてしまってな。
イロニーもガオナァも同じ。
そんな人間が今後増えないよう封印するために集めている。
トントン
トントン
破壊はできんの?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
出来ない。何度も試したが、持ち主が死なないと意味がないらしい。
それに、ただ捨てるのもダメだ。
そう、カトラスを見せる。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
ただのカトラスに見えるだろう?
【魔女の涙】なんだぜ?コレ。

持ち主と持ち主が仲間と認めた者に、不死をもたらす呪いだ。
悲しそうに笑いそういうロイバァ。
剣をしまい、トントンをみる。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
俺はイロニーとガオナァ、ルストを無意識のうちに呪ってしまった。
このカトラスのように周りの人間にも呪いの影響を与えるものがある。だから、捨てられないんだ。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
死んで呪いを解除することも、捨てることも出来ない。

最悪だよ。巻き込んで、何が船長だ。恨まれても仕方ないのに……それどころか、アイツらはついてくる。
トントンは思う……この船長は誰よりも仲間思いの海賊なのだ、と。自分が呪われているにも関わらず仲間を呪ってしまったことを悔い、懺悔しているのだ。
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
暗い話はやめだ。イロニーに怒られる。

さて、お前、海は初めてだろう
ロイバァの言葉に驚くトントン。
何故、バレたのかと。
トントン
トントン
なんで、わかったん?
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
いや、わかってなかったぜ?適当に言ってみたんだが、合ってたのか。
山賊だったんだろ?
トントン
トントン
そこまで、わかるんですか………
キャプテン・ロイバァ
キャプテン・ロイバァ
いや、それはガオナァから聞いた。
チーノはトントンに軍事のことを教わっていたため少しだけだがトントンの過去を知っている。ロイバァの言葉に納得する。
それから、ロイバァはトントンに自身の冒険譚を聞かせた。
山岳に位置する国の話、海の伝説、呪いの海峡、様々な国の食物。
ロイバァは楽しそうに語って見せた。トントンには新鮮なことで、彼も楽しんでいた。

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