第6話

2人の好きは
1,114
2020/10/13 14:23
何やってんだよ…


あなたが屋上から走って行ってしまうのをただ見ていることしか出来なかった自分


待って


すぐそこまで来ていた気持ちが言葉になることは無かった



だって



電話の向こうでさくらがどうかした?そう声をかける
どことなく不安そうな声だった



ううん。なんでもない
ごめん。そう端的に告げる



こんな当たり前のことしか出来ない自分



いや、それ以下なのかもしれない



目の前の掴みたいものすらただ呆然と過ぎ去っていくのを見ているだけ

















高校生の夏




俺には彼女がいた
















さくら
そーそれでね?
さくら
なんかまみが遊ぼーっていうから…
さくら
慎?
…え?あっごめん
さくら
もー何さっきから
さくら
ずっと上の空って感じ
さくら
文化祭だよ?今日は分かってる?w
そうだよなごめん
さくら
さくら
気になることでもあるの?
いや別に大丈夫
さくら
そ…っか







隣を歩く慎とは腐れ縁。


幼なじみだった


ずっと一緒にいて、それが当たり前で


でも私はそんな当たり前の君に恋をした


慎が好き。付き合ってよ


去年のバレンタイン。毎年恒例のギリチョコは本命に変わって私から告白した


強気でちょっと上から目線な私の告白に慎はいいよ


慎はそれだけ言ってくれた
僕も好き。そんな少女漫画みたいなことは言ってくれなかったけどそれでも私は嬉しくて泣いたんだっけ



それくらい慎が好きだった



もちろん今も



今日はずっと楽しみにしてた文化祭



ちょっと屋上行ってくる。



そう行ったっきり帰ってこない慎にどうせダンスでもしてるのかなって安心してた私が馬鹿だった







校庭から小さく見える屋上のフェンス



そこに寄りかかってる慎



その肩がたまに揺れる
遠くの横顔から笑顔が見えた
遠くにいるぼやけた視界の中に慎の笑顔だけが鮮明に見えた気がした



誰かと話してる…?



そう思った時慎がフェンスから離れた



姿が見えなくなった途端不安になって



気づいたら電話をかけていた



慎は言ってた



屋上にいる時は1人になりたい時なんだ。と








自分時々でも思う



私の好き慎の好きは違うのかもしれない







さくら
ねぇ慎
さくら
私って重い?


慎はわかんない。それだけ言った
たったの5文字だったけど私の心は刺されたように痛かった

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