(モトキさんとダーマさんは同居しとります)
モトキside
朝。
アラームの音でいつも通り目を覚ますと、隣の布団にはダーマは居なかった。
今日は休日だしいつもならまだぐっすり眠っている時間なのに、そこには掛け布団が無造作に置かれているだけ。
行き場の無い不安が俺を襲った。
最近はいつもこうだ。
自分の知らないところでダーマが何をしているかわからないと、不安で仕方がない。
これは世でいう、依存という物なのだろうか。
いや、そうなんだろう。
俺のここ最近の行動は「重い」と思われてもしょうがない事ばかりだった。
「自分は嫌われているのではないか」
「嫌になって出ていってしまったのではないか」
そんなどうしようもない不安が押し寄せてくる。
とりあえず布団から出て玄関に向かう。
ダーマの靴は、無かった。
ダーマが自分に何も伝えずに何処かへ言ってしまった。
それだけで俺の目頭は熱くなってくる。
自分でも感情がコントロール出来ていないと思う。
でも、抑えようのないそれはそのまま俺の頬を伝って行った。
どこへ行ってしまったのか探す気力も無くて、気が付いたら俺は最上階行きのエレベーターに乗り込んでいた。
一瞬そんな疑問がよぎった。
でも
もう
どうでもいい。
・
・
・
俺は気の向くままに屋上の扉を開けていた。
扉を開けた先には、見慣れた後ろ姿があった。
その後ろ姿は俺の声にビクッと身を揺らし、そのまま振り向く。
間違いなく、そこに居たのはダーマだった。
俺がそう問いかけるとダーマは一瞬苦しそうな顔をした後、くしゃっとした笑みを浮かべて口を開いた。
「疲れた」
その一言が、今までの事を全て表している気がして、ぼろぼろと涙が流れてきた。
ダーマはそう言って俺に背を向ける。
フェンスは、ダーマの立っている所だけ僅かに外れかけていた。
手をかけると錆びた金具が朽ちて今にも外れてしまいそうだ。
ここまでで、察してはいた。
でも、気が付きたくなかった。
ダーマは今から飛ぼうとしているのだろう。
ビルの、最上階から。
そのまま、俺たちは屋上から身を乗り出して
何も無い空間に向かって大きく一歩踏み出した。
END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。