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ダーマside
今日はシルクの家で撮影。
家だとデレてくるモトキも、今日は外出モードだ。
……なんか物足りないな。うん。
俺は「撮影だから」と思う事で
なんとかその虚無感をねじ伏せ、
今はシルクとマサイとスマブラをやっている。
そうだ。
俺は今日、珍しくシルクとマサイに
ボッコボコにされている。
何故か、全てが手につかない。
昨日特に何かあったわけでも無いのに。
少し気を抜くとすぐに虚無感が襲ってくる。
キッチンの方に目を向ければザカオと一緒に
セカンダリを撮っているモトキが居た。
今日はチョコでなんか作ってるらしい。
冷蔵庫から取り出したチョコを
コンコン叩きながら笑っている。
その光景を見た時、何故か黒い感情が渦巻いた。
ザカオとモトキが居る所と
俺が居る所では、世界が違うように思えた。
その日は3時間程で撮影が終わった。
飲み企画だったから、
そこからなぁなぁで飲み会がスタート。
マサイとモトキがパセリをくるくる回しながら
酒が回った赤い顔で笑っている。
その光景を見て、また黒い自分が出てくる。
そこからさらに3時間。
みんながみんな、よりベロベロになってしまった。
俺は抑えめで飲んでたから大丈夫だったけど。
ソファーの方に目を向ければ、
モトキもすやすやと寝息をたてて眠っていた。
俺が帰り支度を進めていると、
モトキが大きく伸びをしながら言った。
帰り支度ができて、シルクの家を出る。
涼しくなってきた外気が
頬を撫でて後方へ流れていく。
少し回った酒を覚ますように夜道をゆっくり歩いた。
語尾に「ね」がついてるからまだ微妙に酔ってんな。
"ズキッ"
また自分の中で複雑な感情が蠢いた。
モトキが自分以外のやつの事を
こんなにも笑顔で話しているっていう事実に
悲しみを隠せなかった。
自分の存在意義を見失った気がした。
そんな感情でも、2人きりの帰り道はとても幸せで、
「ずっとこのまま話したい」
そう思ってしまう。
今日わかった事と言えば、自分の嫉妬深さくらいだ。
今までもあまり独占欲が大きい方では無かった。
気付いてなかっただけかもしれないけど。
気付いてからわかった。
辛いだけだ。
「俺の行動でモトキもこんな思いしてたのかな」
そう考えた後、少しの優越感が出てきてしまう。
やっぱ俺おかしいのかな…
いっその事……
自分だけのものに出来ればいいのに。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。