あなたside
4月。春。
桜がちらほら舞い始めた。
大学までの道のりが遠く感じて仕方ない..。
『髪の毛伸びたなぁ...』
染めてみたいなぁ...
自分の1度も染めたことがない
髪の毛をすくいながらとかした──。
大学までの道のりの途中、
河川敷に通りかかったとき
1枚のノートが落ちていた。
『ヘアスタイルノート...??』
?「あっ!!」
不思議に思った私が拾うと
とおくで男の人の声がした。
優しいような、でもどこか不器用そうな声。
近づいてくる度に鼓動が早くなる。
「それ俺のです!すいません...」
『あっ、そうなんですね。どうぞ。』
渡しながら顔を見ると
...びっくりするくらい顔が整っていた。
?「あ、あの…」
見惚れてノートを渡すのを
すっかり忘れてしまっていた。
一目惚れしそう...なんて。
『すいません...見惚れてしまって...』
?「えっ?」
『あっ!なんにもないです../』
思わず正直に言っちゃった...。
その人は頬を赤く染めて”ありがとう“って。
?「それじゃ!」
手を振りながらさっそうと去っていくカレ。
頭に桜のってる。笑
『...名前聞けばよかった。』
そう思っても時すでに遅し...ってね。
久しぶり美容院に行ってみようと思った。
ヘアスタイル。
もしかしたら彼は美容師なのかもしれない。
もしかしたら行く美容院にいるかもしれない。
そんなことを考えながら
友達に大学の代休を頼み
美容院への道を急ぐことにした。
北斗side
カランコロン────。
突然やってきたキミは、
今朝ノートを拾ってくれた女性。
第一印象は髪が綺麗だな。
あんな髪で色んなアレンジしたい。
可愛くしたい。なんて思った。
向こうも俺に気づいたようで
『あ、、こんに、ちは。』
「こんにち、は。」
もしかしたら運命?なんて。
『えっと、今日はカットをお願いします』
「了解しました。ではこちらへ」
君の名前も知らないのに。
何故かドキドキして。
髪を触れば案の定柔らかいし、サラサラ。
ほのかに香る彼女の香水は
男の俺でも嫌じゃないくらいのいい匂い。
シャンプーを終えて席に着くキミに言った。
突然ごめんなさい。
でも一目惚れでした。
「好きです────。」
なんて言ったのが昔のこと。
今では。
『昔はお互い一目惚れだったねー笑』
「あぁ、ほんと懐かしい笑」
『ほんとに!急に北斗から
言われてびっくりしたんだから』
「でも、よかったでしょ?」
『これからも一緒にいてくれるならね...??』
そんな可愛い約束を彼女とかわした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。