にぱーっとした笑顔でお茶碗を差し出すヒロ。
晴果釣られて笑いながらそれを受け取り立ち上がる。
奏生もまた釣られ優しく笑い、お茶碗を差し出した。
実は最近また配達やコンビニの弁当ばかりだった為、
人の作りたての料理を久しぶりに食べたのだった。
晴果のさつま芋と豆腐の味噌汁をズズッと啜って暖まるヒロ。
今は段々寒くなって、木々が鮮やかになり、
何だか心も鮮やかな気持ちになる頃だった。
ニコニコとボトルを手に取って見せびらかすように机に置いた。
シャンパンを飲まないし買わない一般人達としては、普通に手で開けられることはあまり知らない。
かといって、開けようとして失敗する予感さえする。
二人が目を瞑った瞬間、籠った音でポンッと音が鳴った。
開けられたシャンパンからは爽やかな柑橘の香りがして、何だか飲むのが楽しみになってきた。
ヒロが注いだグラスを持って、乾杯を交わす。
キンッ、と音が鳴らすと、奏生は晴果の方を見ながら少し戸惑っていた。
恐らく秋の味覚祭りのことだろうと晴果は感じ取っていた。
自分の話をしっかり聞いて、覚えて、
言ってくれたことが嬉しくて。
思わず今までで一番の笑顔を浮かべた。
駄々っ子のようにそう言うのを二人で笑って、
光る月のような色のシャンパンを一口飲んだ。
お酒は缶しか飲まない派の二人からしたら、
その値段は目が飛び出る程の値段で…。
大切に飲もうと思った二人であった。
ヒロの前に置かれたシャンパンを風の如く取り上げて、
ヒロの前に光の速さで麦茶を置いた。
端から見れば見事な連携プレーだったろうに。
そう二人で鬼のような形相で叱った。
流石に一人で飲んでいないとはいえ、一本でもかなりの量だ。
勿論、取り上げたお酒を取らないように両肩を掴む。
力こぶを作ってニコッと笑ったが、
奏生は100%疑いの目を向けた。
その感情の中にはそんだけ飲んで体が平気なわけがないという気持ちも入っていた。
そんな他愛もない会話をして、
また少しだけ三人でその続きをした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。