第13話

十二食目
42
2022/04/30 12:43
代田 ヒロ
代田 ヒロ
お姉さん!おかわりください!
にぱーっとした笑顔でお茶碗を差し出すヒロ。

晴果釣られて笑いながらそれを受け取り立ち上がる。
百井 晴果
百井 晴果
はーい、あ、三鳥さんも空ですね。
ごはんいりますか?
三鳥 奏生
三鳥 奏生
あ、ほんとだ…。まだお腹空いてるのでお願いします。
奏生もまた釣られ優しく笑い、お茶碗を差し出した。

実は最近また配達やコンビニの弁当ばかりだった為、

人の作りたての料理を久しぶりに食べたのだった。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
さつま芋うま~~!!
百井 晴果
百井 晴果
ふふ、良かったです。やっぱりこの時期のさつま芋は甘くて柔らかくて良いですよね。
晴果のさつま芋と豆腐の味噌汁をズズッと啜って暖まるヒロ。

今は段々寒くなって、木々が鮮やかになり、

何だか心も鮮やかな気持ちになる頃だった。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
すだちってこんなに美味しいんですね…。
百井 晴果
百井 晴果
気に入ってくださいましたか?
三鳥 奏生
三鳥 奏生
はい、サンマに何かすっぱいものをかけると良いのは知ってたんですけど、
なんだったか忘れてて…
三鳥 奏生
三鳥 奏生
なんだかもっとサンマが好きになりました。
百井 晴果
百井 晴果
そう言って頂けると作り手としては最高に嬉しいです!
代田 ヒロ
代田 ヒロ
うんうん、あ、シャンパン開けます?開けちゃいます??
ニコニコとボトルを手に取って見せびらかすように机に置いた。
百井 晴果
百井 晴果
うん、いいよ。あ、開けるやつあったかな…
代田 ヒロ
代田 ヒロ
え?手で空きますよ。大丈夫っす!
シャンパンを飲まないし買わない一般人達としては、普通に手で開けられることはあまり知らない。

かといって、開けようとして失敗する予感さえする。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
頼もしすぎんだよな…
百井 晴果
百井 晴果
そ、そっか。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
んじゃ空けまーす!空からコルク降ってくんので気をつけてくださいね!!
百井 晴果
百井 晴果
え、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
待っ…!
二人が目を瞑った瞬間、籠った音でポンッと音が鳴った。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
なんちゃって!流石にプロなんで!
普通に開けられますよ~~!
百井 晴果
百井 晴果
び、びっくりした…。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
むしろ飛ばしても良い流れだけどね…
代田 ヒロ
代田 ヒロ
エッ!そっすよね!
いやでもミスって怪我させたら怖いんで…
百井 晴果
百井 晴果
ありがとう、良い匂いがするね。
開けられたシャンパンからは爽やかな柑橘の香りがして、何だか飲むのが楽しみになってきた。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
辛いよりも甘い方が良いかと思って!甘口のにしました!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ほんとだ…爽やかだね。
百井 晴果
百井 晴果
トロピカルな感じかな?
代田 ヒロ
代田 ヒロ
味は優しめでグレープフルーツみたいな感じなんすよ!
百井 晴果
百井 晴果
じゃあ、…うーん、
秋の味覚祭りに乾杯?
代田 ヒロ
代田 ヒロ
かんぱーい!!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
え、あ、乾杯?
ヒロが注いだグラスを持って、乾杯を交わす。

キンッ、と音が鳴らすと、奏生は晴果の方を見ながら少し戸惑っていた。

恐らく秋の味覚祭りのことだろうと晴果は感じ取っていた。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
ってなんすか!!秋の味覚祭りって!
百井 晴果
百井 晴果
ふふ、そりゃあ秋の味覚祭りですよね、三鳥さん!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
…はい、祭りです!
自分の話をしっかり聞いて、覚えて、

言ってくれたことが嬉しくて。

思わず今までで一番の笑顔を浮かべた。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
えーーずーるーいー!
駄々っ子のようにそう言うのを二人で笑って、

光る月のような色のシャンパンを一口飲んだ。
百井 晴果
百井 晴果
…!美味しいけどお高いお酒の味がする…
三鳥 奏生
三鳥 奏生
!めっちゃ美味い…!
代田 ヒロ
代田 ヒロ
でっしょー!!
賞味期限ギリギリだったんで貰ってきました!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
そんな飲食店でおかず持って帰ってきたみたいに言うけど…これ…いくら…?
代田 ヒロ
代田 ヒロ
んー、一万以下だと思うっすよ~!
うちの店長が極秘ルートで仕入れてるんで!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
……マジか…
百井 晴果
百井 晴果
おぉ…おぉ…凄い…
お酒は缶しか飲まない派の二人からしたら、

その値段は目が飛び出る程の値段で…。

大切に飲もうと思った二人であった。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
はは!大丈夫っす!俺今日三本目なんで!正確には夜中っすけど!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
……
代田 ヒロ
代田 ヒロ
あれ?
ヒロの前に置かれたシャンパンを風の如く取り上げて、
百井 晴果
百井 晴果
………
代田 ヒロ
代田 ヒロ
えっ?え?
ヒロの前に光の速さで麦茶を置いた。

端から見れば見事な連携プレーだったろうに。
百井 晴果
百井 晴果
駄目!!肝臓!!壊れる!!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ほんっっっとに、死ぬぞ。
口つける前で良かった。
そう二人で鬼のような形相で叱った。

流石に一人で飲んでいないとはいえ、一本でもかなりの量だ。

勿論、取り上げたお酒を取らないように両肩を掴む。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
で、でも…
百井 晴果
百井 晴果
うわぁ~~気付いてたら内臓系に優しいもの作ったのに~~!!
代田 ヒロ
代田 ヒロ
大丈夫っすって!
ガス○ール飲んだんで!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
こんなところでホストの愛用薬聞きたくなかったよ。
百井 晴果
百井 晴果
もう、ごはん食べられてるから良いとして…体調は?
代田 ヒロ
代田 ヒロ
全然大丈夫っす!!
力こぶを作ってニコッと笑ったが、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
……ふうん。
奏生は100%疑いの目を向けた。

その感情の中にはそんだけ飲んで体が平気なわけがないという気持ちも入っていた。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
えぇ!?ほんとっす!!お姉さんの料理超美味しいし元気出たっす!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
それはそう、
でも飲みすぎは気を付けてな。
百井 晴果
百井 晴果
怒りにくくなっちゃうよ…。
ありがとう。
そんな他愛もない会話をして、


また少しだけ三人でその続きをした。

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