第19話

十八食目
40
2022/04/30 13:01
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
じゃあ、またね晴ちゃん。
百井 晴果
百井 晴果
サキさん、またお話しできる日を楽しみにしていますね!
玄関先で名残惜しそうに晴果はサキと握手をした。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
あらあら、ほんとに可愛い子ね、
またいつでも呼んで?
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
お仕事頑張って!
じゃあね!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ありがとうございました…!
代田 ヒロ
代田 ヒロ
ちょっと色々やらかしすぎだけど…
でも、ありがと、ガネさん。
そのありがとうには沢山の意味が籠っている。

何せ今日は色々あったから。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
あっらやだ!ヒカルの褒めなんていつぶりかしら!嬉しい!
代田 ヒロ
代田 ヒロ
だーーーっ!!帰れ帰れ!!じゃぁな!
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
ふふ、じゃあね!
『ガチャン』

ドアが閉まったあと、二人へ向き直し、顔を歪ませるヒロ。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
っは……やっと消えた。
すんません迷惑かけて。
百井 晴果
百井 晴果
いえ!とっても楽しかったですよ!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ぼ、僕も。楽しかったです。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
優しいっすね~2人とも。
またやりましょ!
百井 晴果
百井 晴果
…!今度は花見とかどうですか?
近くの大きな公園、四月には満開の桜が咲きますし!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
それは楽しみです…!
代田 ヒロ
代田 ヒロ
やった!!行きましょ行きましょ!
百井 晴果
百井 晴果
今度は腕によりをかけてお弁当作らせてください、その、
迷惑なんかじゃないので!
代田 ヒロ
代田 ヒロ
お姉さんの料理!?
楽しみにしてる!!
百井 晴果
百井 晴果
…はい!それではまた!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
今日はありがとう、
代田くん、百井さん。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
俺こそ!じゃあ!
こうして二人も居なくなり、

静かな部屋にまたら扉が閉まる音がした。


それから、その静かな部屋に声が響く。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
……。ガネさんのお節介。
確かに、俺は、自分の気持ちにずっと嘘をついている。

初めはお姉さんのことを、本当の姉の様に慕うつもりだった。

沢山の女性の愛に触れて、愛されてきた俺には、

お姉さんの春の暖かさのような優しさが、

心に沁みすぎてしまった。

あまりにも、それが、

昔に一度だけあった恋のようで。

その感情に蓋を、した。

つもりだった。

けれど、
百井 晴果
百井 晴果
はは、分かるよ。
まだ数回しか会ってないけど、嘘つくときくらい分かるよ。
俺は、ホストだから。

嘘をつくのは得意だし、皆騙されてしまう。

なのに、なのに。

期待してしまう。

そんなのしてはいけない。

俺には、
百井 晴果
百井 晴果
お仕事頑張って!
そんなに優しい声で、俺に話しかけないで。

もっと、冷たくしたっていいのに。

もって、離れてくれたっていいのに。

何度だって、優しくしてくれる。


声が上擦る、バレてしまう。

俺の皮が剥がれてしまう。

でも、気持ちに蓋をしていいのか?

果たしてそれは本当に後悔しないのか?
百井 晴果
百井 晴果
三鳥さんにも聞いておくね。
例え叶わなくたっても、

不可能だったとしても。

俺に後悔してほしくないから、ガネさんはあぁ言った。

伝えなきゃ、ダメだろ。

進む前から、諦めるな。

白黒付けないボーダーラインで話す俺の職業。

でもこれは、仕事じゃない。

俺は、このときだけは、ホストじゃなくていいんだ。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
…ケジメ、付けなきゃ。

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