思ったよりも女性らしい、というのも不適切な表現だが、
可愛らしい素振りでヒロの隣に座った。
思ったよりも強めの音を立てながら叩かれるヒロ。
完全に痛いやつだった。
ここで何故か奏生も驚くがまぁ晴果は今の状況が全くわからない様子。
サキはヒロが普段女性をお姉さんと呼ぶことはないのを知っているので、
そういう特別な相手なのかと聞いたのだった。
それを見透かされ、逆ギレか隠そうとしてるのか怒っていた。
一本の竹串しか使っていないのに、クルクルと綺麗に丸め込んでいく。
半ばプロにすら見えて、晴果は料理する身としては少しワクワクしていた。
晴果と予想以上に仲良くするサキを見て妬みながらも、
ヒロも上手く回していく。
一方奏生は手持ち無沙汰になり、作りまくるサキとヒロから沢山貰っていた。
思わぬ振りに驚き、若干照れながらそう言う。
それは一般人からしたらカッコいいだなんて普段から言わないだろう。
そしてこちらも、少なくとも好ましく思っている女性からそう言われ、
反射的に顔に熱が籠っていく。
耳まで真っ赤だが、誰も何も言わない。
何せ部屋が暖房&こたつ&たこ焼器で暑すぎるのだ。
急にサキに顎を上げられながら顔の隅々まで見られていく奏生。
こちらは先程とは別のドキドキで、
段々体が寒気と一緒に冷えていっていた。
ゲシゲシと足でサキを蹴るが、
体格が良いのでびくともしない。
サキは本当に貶しているのではなく、
美しいものであってほしいという願望からそう言っている。
確かに言葉は悪いけれど、そのアドバイスは的確で、バーでも良い相談相手として働いているのだ。
美しいものは美しい、そうでないものはこうしたら美しくなれる。
そういうハッキリとした人間だ。
ぐっと握りこぶしを作ってサキと笑い合うが、
男子二人は唯一の華である晴果がそちら側に付いたことに頭を悩ませた。
それを知ることも無く、美味しく食べる晴果と可愛いと思う晴果にたこ焼きを渡すサキ。
どうやら面白いものはまだまだ入っている様子だが、
比較的美味しいものばかりが入っていて箸が進んだ。
照れながら腕をブンブンと振るが、
三人はニヤニヤと笑っていた。
珍しくヒロの表の一面が見えるのが嬉しいのだ。
サキも、二人にはこういう感じなのかと親のように微笑んでいた。
冬の夜に、そんな掠れた声が響いていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。