第18話

十七食目
34
2022/04/30 12:59
百井 晴果
百井 晴果
…スー…
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
ちょっとお酒が強すぎちゃったかしら。
声を小さくしてそう言うサキ。

晴果はお酒が多く入ると眠気が強くなって寝てしまうタイプなのだ。

先程『すみません、少しだけ…』と言って寝転んでから寝たままだ。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
ガネさんいつものノリで度数高いの持ってきたでしょ。大丈夫?お兄さん、顔真っ赤だけど…
三鳥 奏生
三鳥 奏生
あ、僕は流石にもう飲めないですけど、顔が赤くなるだけなので…気にしないで。
2人とも悪酔いするタイプではなく、

体に出るタイプで、奏生は頬が真っ赤に染まっていた。

なのでとりあえず水をずっと飲んでいる。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
無理しないで…もう!
ウイスキーも持ってくるなんて!
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
だってえ、お酒が入らないと話せない話もあるでしょ?
代田 ヒロ
代田 ヒロ
それが魂胆だな…
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
ふふ、で、丁度良いじゃない。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
そこの芋男、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
み、三鳥です…。
ニコニコと笑っていた顔から、

スッと変わり、睨むように奏生を見る。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
いいのよ!別に、アタシが覚えやすいから。アンタ、DTでしょ。どうせ。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ぁぁぁ…
代田 ヒロ
代田 ヒロ
ちょ、ガネさん???お姉さんいるんだよ???あと普通にまずい、出禁にするよ?俺怒るよ??
流石にまずい、コンプラ的にもまずい。

なんなら作者的にもまずいような台詞が部屋に響く。

奏生は本質を突かれ崩れ、

ヒロは顔面蒼白でサキに拳を用意した。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
あぁ、じゃあ彼女出来たことないでしょ。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
…!
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
だろうと思った。さっきからね毛布やら洗い物やら細かい気配りは完璧よ。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
でもね、そんなんじゃ絶対にこの先進めないわ。
何か、空気が変わって、2人とも静かにサキの話を聞き始めた。

サキは人にアドバイスをするのが得意で、

ハッキリ言っているのに、自然と嫌な気が起きない言葉と声をしている。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
進めないと思ってるから進めないの。
もう少し自信を持ちなさい。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
奥手すぎて相手に気を使わせるのは、レディに対して失礼よ?
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
今はそんな風潮でさえ否定されちゃうかもしれないけど、実際は女性はいつだって不安なの。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
だからといって不安になるなとは言わない。でも支えてあげられるような男になりなさい。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
分かった!?
三鳥 奏生
三鳥 奏生
は、はい!あ、あの…それって。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
お黙り、そこまでよ。
何のことについてなのかは、野暮である。

そこからは自分で考えて、自分でどうにかする。

あくまで、言う。

無責任に見えて、とても大切なことなのだ。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
アンタも、ヒカル。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
…俺?
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
いつまで気取ってるつもり、
隠すんじゃないわよ。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
アンタその職業は〝それ〟がご法度だと思ってるでしょ。無理よ、人間なんだから。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
そんなやつ沢山見てきた。
そんなん進んでから考えなさい。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
進む前から諦めてたら、
いつまでも良いもの逃すわよ!
代田 ヒロ
代田 ヒロ
……ガネさん、なんで、
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
なんでもなにもアタシがアンタ達と会いたかったのはそういうこと。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
話は聞いてたけど、見て聞いて、
アタシの肌で感じないとわからないものがあるのよ。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
でも今日分かったわ。
アンタ達はイイコで、
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
晴ちゃんもとっても魅力的ってこと。
色んな人を見てきたサキは、眠る晴果を見てそう優しく言う。

晴果の優しさは、体感しなくても見ているだけでわかるほどなのだ。

城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
この子の料理、いつか食べてみたい。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
…きっと、びっくりすると思います。
なんだか薬みたいに体が軽くなるんです。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
…確かに、薬みたいだよね。
こんなに気配っちゃって。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
頑張り屋さんなのよ、あ、ソウ。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
え、ぼ、僕?
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
アンタしかいないでしょ。
これ連絡先。困ったら連絡しなさい。
そう言って電話番号の書かれた紙を渡される。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
!ありがとうございます。本当に。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
いいの、アタシは好きでこういうことしてるのよ。それが生き甲斐。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ところで、城ヶ根さんの働いてるバーって一体、
代田 ヒロ
代田 ヒロ
お兄さんそれは…!!!
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
ゲイバーだけど?
代田 ヒロ
代田 ヒロ
(頭を抱える)
三鳥 奏生
三鳥 奏生
!!?!?
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
あぁ、ヒカルは違うわよ、営業外で来てるだけ、たまに勝手に寝てくのよ。
慌ててヒロが止めるが、手遅れだった。

一歩早くサラリと言った。

奏生は一度驚いたが、感心するように言った。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ほ、本当にあるんですね…。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
アッハハ!あるわよそりゃあ。
興味あったら来なさい、断ったって怒らない面白いやつばっかりよ。
百井 晴果
百井 晴果
ん…!!す、すみません!!
寝ちゃってて…
その笑い声で起きた晴果は、

自分が無意識のうちに眠ったことに気付き飛び起きた。
代田 ヒロ
代田 ヒロ
お姉さん大丈夫?アルコール度数高いよね…水飲んで!水!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ここにありますよ…!
百井 晴果
百井 晴果
ありがとうございます…!
心配してあたふたする二人と、

その優しさが嬉しくて笑う晴果。


その姿を見て、サキもまた優しく微笑んだ。
城ヶ根 サキ
城ヶ根 サキ
ふふ、面白いわねぇ、ほんとに。

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