声を小さくしてそう言うサキ。
晴果はお酒が多く入ると眠気が強くなって寝てしまうタイプなのだ。
先程『すみません、少しだけ…』と言って寝転んでから寝たままだ。
2人とも悪酔いするタイプではなく、
体に出るタイプで、奏生は頬が真っ赤に染まっていた。
なのでとりあえず水をずっと飲んでいる。
ニコニコと笑っていた顔から、
スッと変わり、睨むように奏生を見る。
流石にまずい、コンプラ的にもまずい。
なんなら作者的にもまずいような台詞が部屋に響く。
奏生は本質を突かれ崩れ、
ヒロは顔面蒼白でサキに拳を用意した。
何か、空気が変わって、2人とも静かにサキの話を聞き始めた。
サキは人にアドバイスをするのが得意で、
ハッキリ言っているのに、自然と嫌な気が起きない言葉と声をしている。
何のことについてなのかは、野暮である。
そこからは自分で考えて、自分でどうにかする。
あくまで、言う。
無責任に見えて、とても大切なことなのだ。
色んな人を見てきたサキは、眠る晴果を見てそう優しく言う。
晴果の優しさは、体感しなくても見ているだけでわかるほどなのだ。
そう言って電話番号の書かれた紙を渡される。
慌ててヒロが止めるが、手遅れだった。
一歩早くサラリと言った。
奏生は一度驚いたが、感心するように言った。
その笑い声で起きた晴果は、
自分が無意識のうちに眠ったことに気付き飛び起きた。
心配してあたふたする二人と、
その優しさが嬉しくて笑う晴果。
その姿を見て、サキもまた優しく微笑んだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。