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第22話

二十一食目
62
2022/04/30 13:43
百井 晴果
百井 晴果
奏生さん!!
体格は細身でも、男らしい背中、

チェックのシャツを羽織っている、

その背中をやっと見つけて、大きな声で名前を呼んだ。

奏生は弾けるように振り返ると、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
え、も、百井さん、どうしました?
何かありましたか?
百井 晴果
百井 晴果
あ、あぁ!いえ、その、少し様子を見に行こうと思って。
思わず勢いで嘘をついたが、内心凄く焦っていた。

奏生はペットボトルを晴果に見せながら、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
すみません、自販機中々見つからなくて。何か飲みますか?
百井 晴果
百井 晴果
私は水筒あるので、大丈夫です。
その、折角なので桜ちょっと見て、みませんか。ヒロくんには申し訳ないですけど…。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
!…そ、そうですね、あとでお詫びしましょう。
公園の桜並木を二人で歩く。

優しく暖かい風が二人に吹く。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
なんだか、懐かしいです。
百井 晴果
百井 晴果
…あの日のことですか?
三鳥 奏生
三鳥 奏生
…はい、なんか、恥ずかしいな。
鍵が壊れて、座り込む隣人、

酔いまくった友達といる隣人。

話しかけた時、

一つの物語が始まるように感じた。
百井 晴果
百井 晴果
あはは、そうですね。
面白かったですよ、いつもの生活が変わる予感がしましたから!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
変えちゃってすみません…
百井 晴果
百井 晴果
いいんですよ!お陰でお二人とも仲良くなれましたし!
一緒に食べるのめちゃめちゃ楽しいんですから!前にも言ったけど…。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
嬉しいです。
百井 晴果
百井 晴果
私もです。
この沈黙が、嫌いじゃない。

純粋に桜を見て、目を輝かせる貴方が、

物凄くいとおしく感じる。

奏生は、後ろの桜よりも、晴果を見ていた。

三鳥 奏生
三鳥 奏生
き、綺麗です。
口に、出してみた。

思ったことを、はじめて。

それらしい言葉を。
百井 晴果
百井 晴果
そうですね…、
今年は少し早く咲いたって、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
そ、そうでは、なくて…
百井 晴果
百井 晴果
三鳥 奏生
三鳥 奏生
百井さんが、です。
百井 晴果
百井 晴果
!?、!??え、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
あ、あの!か、髪型や、格好が…
百井 晴果
百井 晴果
あ!あー!で、ですよね、すみません!ありがとうございます…!
それからまた、静かになる。


この沈黙は嫌いじゃないとか思ったけれど、

やっぱり、それどころじゃない。

言わなくては。

言わないと。
百井 晴果
百井 晴果
三鳥さん、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
百井さん、
百井 晴果
百井 晴果
あっ
三鳥 奏生
三鳥 奏生
あ。
百井 晴果
百井 晴果
お、お先にどうぞ!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
え、えっと、あ、じゃあ。
百井 晴果
百井 晴果
は、はい。
ぐっと手に力を入れる。

鼓動が早い、収まらない、それでも、

言わなきゃいけない言葉が。

晴果と奏生は、桜の下で立ち止まり、向かい合った。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
僕、百井さんに出会えて良かったです。百井さん自体にも、料理にも。
百井 晴果
百井 晴果
三鳥 奏生
三鳥 奏生
貴方のおかげで、
僕はこの気持ちになることができたし、言えることができるんです。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
あなたと話す内に、もっと、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
百井さんの隣に居たい、
って思うようになりました。
百井 晴果
百井 晴果
!…え、…!
三鳥 奏生
三鳥 奏生
…好きに、なりました。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
でも、きっと、百井さんは、
百井 晴果
百井 晴果
ストップ!!
百井 晴果
百井 晴果
私も、私もです…!
双方顔は桜より赤い、

そんなことより、なにも考えられない。

ただ頭に浮かんだ言葉を口に出す。

もうきっと、止まらない。

止まれない。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
え、え!?!?
三鳥 奏生
三鳥 奏生
ななな、なんで!?
百井 晴果
百井 晴果
なんで!?そ、そんなの…
私に分かるわけ無いじゃないですか!
百井 晴果
百井 晴果
私も、ずっと、三鳥さんと、
お話ししていたい。それは、この先もずっと変わらないと思います。
照れていて何かおかしくなっているが、

ゆっくり呼吸をして、

言いたい事をゆっくり話していく。

すると奏生はしゃがみこむ。
三鳥 奏生
三鳥 奏生
…~~~!!よかった……良かった…。
百井 晴果
百井 晴果
なので、おつき…
三鳥 奏生
三鳥 奏生
わー!!!ちょ、それは僕から言わせて!
まさかそちらから言われると思っていなかった言葉に立ち上がり、勢いで肩を触る。
百井 晴果
百井 晴果
え、普通止めます!?
三鳥 奏生
三鳥 奏生
そ、それは言わないで…!!
百井 晴果
百井 晴果
じゃ、じゃあ、
三鳥 奏生
三鳥 奏生
……僕と、お付き合いして、ください。
返事は、とびっきりの笑顔だった。




桜が吹雪く、散っていく。

誰かを笑顔にするのが仕事の人だっている。

その笑顔を見れなくても、仕事をして誰かが幸せになってくれればいい人も。

或いは、料理で人を笑顔にする人もいる。

どんな方法であれ、本当の笑顔になったぶん、

人は幸せになったり、成長できる。


今回は、ある女性が、料理を通して、


人を幸せにする話だった。












_______『Make your smile!』END

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