優吾side
北斗が救急車に乗ってから、大我は緊張が途切れたのか、ずっと暗い顔で下を向いてる。
だけどその手はしっかりと北斗の手を握ってて、大我の考えてることがなんとなく分かる。
その目には涙が浮かんでて、体も震えてる。
(優吾)大我、大丈夫だから。北斗は絶対大丈夫だから。
気休めにもならないだろうけど、これは俺自身にも言い聞かせてるんだ。
悪い妄想ばかりしちゃうよね、
だっていつもはあんなに元気な北斗が、酸素マスクして点滴に繋がれてるんだよ、、
(大我)っ、はぁ、北斗が、、北斗が死んじゃったらどうしよ、、
(優吾)ばか、北斗が、あの北斗がこんなんで死ぬわけないだろ、、大丈夫。大丈夫だから。
泣いてる大我を落ち着かせて、北斗の手をギュって握る。
しばらくして病院に着いた。
甲殻類を食べてしまったことによるアナフィラキシーショックらしい。
治療をしてもらい、なんとか一命をとりとめたとはいえ、油断は出来ないと言われた。
いつ目を覚ましてくれるんだろ、、
みんなで病室で北斗が起きるのを待つ。
酸素マスクと点滴はまだつけられてて、その姿が痛々しい。
(慎太郎)北斗、、ごめんな。俺らがちゃんとスタッフさんに確認してれば良かった、、グスッ、グスッ
慎太郎なんか泣いちゃってて、
(ジェシー)大丈夫、大丈夫だから。
ジェシーもまた涙目をして慎太郎を慰めてる。
樹はただ静かに北斗の手を離さないで、だけどその目には涙がたまってる。
大我は、、年下のみんなが泣いてるなか、何か我慢してる感じ。
年上だからって泣いちゃいけないって思ってるんだな、、たぶん、、
しばらくして大我が赤い目をして出ていくから、後を追いかけた。
(大我)俺、、はぁ、ちゃんと出来てたかな、、もっとちゃんとしてたら、、
(優吾)何言ってるんだよ、お医者さん言ってたよ?大我が的確に指示してくれたから、北斗は死なずに済んだって。
(大我)そうなの?
(優吾)そー。ね?病室に戻ろ。
その日はみんな北斗の病室で寝ちゃってたみたい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。