\キーンコーンカーンコーン/
やっと6限目が終わった…
夏の学校ほど憂鬱なものはないと思う。
それもそのはず、
窓側の席で、
太陽の日差しが突き刺さり、
エアコンの風が当たらない。
総じて…
この席に当たってしまったことを何度悔やんだこ
とか…
夏とは仲良くやって行ける自信が無い、、
急に顔に冷たさを感じた俺は、
びっくりして反射的に横を見る。
そこには「にししっ笑」と
まるで効果音が入りそうなくらい、
イタズラな笑みを浮かべている長尾が居た。
長尾とは小学校からの仲で、
中学、高校と同じ学校。
しかも今は同じクラス。
同級生であり、親友だ。
帰り道_
いつものイタズラな笑みとは違い、
首から汗が滴っている長尾は
なんとも色っぽくて、
目を離せずにいた。
別に長尾と居たくない訳じゃない。
ただ最近の俺は、
長尾を見るとよく分からないが、
鼓動が早くなる気がする。
何故だかは分からない…
最近の俺はおかしい。
だから長尾と居ると、
もっと変になってしまいそうで、
少しだけ怖かった。
でも断わる理由にはならない。
みっちー宅_
正直長尾を家に入れた回数は少なくはない。
長尾も完全に家の構造を把握してるから、
俺が行くより先にずかずかと部屋に入っていった。
俺の腕を握りぶんぶん振り回す長尾。
相変わらず俺の手を握りながら、
上目遣いで俺をもてあそぶ。
冗談だって、
からかっているだけだって、
自分でも分かっているのに、
顔には熱が集まる一方で
心臓は鼓動を止めることを知らなかった。
俺は止まらぬ鼓動を必死に抑えながら、
平常心を保っていたのに、
急に長尾が俺の頬に手を当てた。
心配そうに俺の顔を覗き込む長尾。
でも今の俺にはその行動が逆効果ということを、
長尾は気づいてなんかいない。
俺の顔が赤い理由が、
自分だってことも、
当の本人は知る由もないだろう。
思わず逃げてしまった…
長尾に触られたところが
まだじんじんと熱い。
やっぱり今日の俺はおかしい。
いつもならこうはならないのに…
気持ちを落ち着かせて部屋に戻る。
なんで君は普通で居られるの?…
分からない…
急に長尾が俺のアイスを食べる。
長尾の手を引いて、
思わずキスしてしまった…
瞳が左右に揺れて戸惑っている。
そりゃ親友に急にキスされたら誰だって驚くだろう…
怖い…
親友を失いそうで…
悲しそうと言うか、
なんとも言えない顔をしている長尾を見て、
自分が長尾を好きだったら
なにか都合が悪いのでわないかと思った。
長尾は明らかに嫌がっている。
自分は長尾が好きなのだろうか…
考える前に答えが出ていることくらい分かる。
でも仮に、
俺が今長尾に好きと言ったら…
君はきっと俺から離れていくだろう。
今更悪ふざけたと言っても、
自分が最低なのに変わりは無い。
じゃあ今俺は、
なんて言うのが正解なの、?
思っていた反応じゃない。
長尾はキスされた事じゃなくて、
した理由が悪ふざけだとしたら嫌だと言っている。
もちろん悪ふざけなんかじゃない。
優しくゆっくり長尾に抱きしめられる。
親友も恋人も、
俺の中では君だけなんだ…
end…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。