3階角の、誰もいなくなった教室。
静寂を打ち破るように、震えた、か細い声が響いた。
目の前にいる華奢な少女が、顔を真っ赤に染めながらこちらを見る。
今まで何人にも聞いてきた質問をする。
なるほどね…
やっぱり、か…
瞳を少し濡らした彼女に背を向け、俺は足早に教室を出た。
彼女も、俺の内面までは、好きになってはくれなかったなあ…
2階と1階を繋ぐ階段の踊り場で、俺の幼馴染みで親友の煌汰が待っていた。
俺はそう、内面を好きになってくれた人としか付き合わないって決めてるんだ。
それはまあ幼少期のトラウマ?っつーか、それのせいかな…。
俺は小学生のとき、自分で言うのもなんだけどかなりのマセガキで、学年で一番かわいい子に告白されたから付き合っていた。
何となくうまく行ってたとは思ってたんだけど、ある日突然、フラれた。
『櫂翔君ってそんな人だと思わなかった』って。
正直、は?ってかんじだったね。
そっちが勝手に告白してきといて内面を理由にしてフるとか。
所詮女なんて俺の顔しか、表面しか見てないんだから。
好きな人ねえ…
煌汰のことは離したくないっていうか、ずっと一緒にいたいって思うんだけど、ねえ?
まあ、察してよ。
…ごしゅ?
ごしゅってなんだ…
五種?ごしゅ…ご主人様…?
まさかなwあいつはどちらかと言うとSだろw
きゅ、9年って…相当な時間だよな…
小1から今までってことか?
煌汰ってそんなに一途だったのか…
なんか…
煌汰がドヤ顔で言う。
愛が重いのはドヤっていいことなのか…?
煌汰が露骨にあせる。
今更過ぎるけど。
だれだろ…と考えながら下駄箱で靴をはく。
歩道を歩き始めたところで煌汰が口を開いた。
煌汰が縁石にのぼる。
煌汰が口を開いたとたん、タイミングを見計らっていたかのようにトラックが通りすぎる。
轟音が鼓膜を打ち、煌汰の細く柔らかい声は聞こえなくなる。
煌汰がいたずらっぽく笑った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。