カーテンの隙間から光が差し込む
久しぶりにちゃんと寝た気がする
彼女が近くにいることが安心に繋がったのか
相変わらず彼女は起きてくれない
俺は彼女に挨拶をして身支度をした
目覚めた時はかっこいい姿で居たい
絃歩くんかっこいいね
そんな風に言われたいとか考えてた
俺は早めに身支度をして彼女の元に行った
彼女は起きてくれなかった
俺はギュウッと彼女の手を握り自身の失態を話すことにした
ここから先、俺は簡単に口に出来なかった
この先、彼女は俺でいいのか
俺といて幸せな家庭を築けるのか
不安に駆られた
でも社長に言われた言葉
それを思い出し勇気を振り絞った
俺は一呼吸置いて言葉を綴った
俺は彼女の手を握り自身の思いを込めた
今まで何も反応がなかった彼女
ピクッ
俺の手の中で僅かな力ではあるが指が動いた
彼女はゆっくりと目を開けた
彼女はまだしっかりとしない意識で俺の名前を呼んでくれた
酸素マスクで声を出しづらいのに一生懸命喋ろうと頑張ってくれていた
俺は気づけば大粒の涙を流していた
すると彼女は本当に小さな力ではあるけれども手を握り返してくれた
キュッ…
俺は涙が止まらなかった
彼女の久しぶりに聞く声
微力ながらも手を握り返してくれたこと
全ての『あたりまえ』に改めて実感させられた
しんどいはずなのに優しく手を撫でてくれる
その優しさに俺は甘えて泣き続けた
病院なのに俺はなりふり構わず声を上げて泣いた
俺は彼女の手を握りしめずっと泣き続けた
彼女は俺に『大好き』
そう伝えるとまた眠りについた
安心したのかさっきよりも顔色も良かった
俺は彼女の手にキスをし、静かに寝かせてあげた
そして医者を呼びに行き、社長に連絡することにした
俺は静かに眠る彼女を後に部屋を出た
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。