俺はふわふわしている
意識はあるようでないようで
周りは真っ白だ
視覚も聴力もある
辺りを見渡して見ると遠くに人がいた
走ってそこに向かう
そこには彼女がいた
今にも消えそうな様子でこっちを見ている
俺は彼女の手を引こうと自分の手を伸ばした
スカッ…
彼女は俺の返事はしてくれない
彼女は向こうの方へ消えていく
スカッ
捕まえることも出来ない
俺は怖くなって彼女を抱きしめた
強く強く、どこにも行かないように
頭を撫でてくれる、ここであれは夢だったんだと実感した
彼女は俺が落ち着くまでずっと抱きしめて頭を撫でてくれていた
しばらくして呼吸も落ち着いてきた
そう言い彼女は支度をしにベッドを出た
落ち着いたとはいえ、何故か悪いことが起こりそうな予感がする
何もないといいが、もし彼女の身に何かあったらと考えると怖くなった
こんなの俺らしくない
涙があふれて止まらなかった
止めたくても止め処なくあふれてくる
普段泣かねぇのに…ダセェ…
トコトコトコトコ
彼女は俺を抱きしめ涙が止まるまでずっと背中をさすったりしてくれた
彼女の優しさにまた甘えて俺はスッキリするまで泣き続けた
駄々をこねる絃歩くん、異常なくらい怖がってるし何を見たのかハッキリ分からない
プルルルルル
カチャッ
ガチャンッ
私は濡らしたタオルを作って持ってきた
絃歩くんの体を隅々まで拭いた、昨日のこともあって汗をかいているし
ゴソゴソ
プチッ…プチッ
しばらく話をしているとノック音が聞こえた
コンコンッ
ガチャ
キョロキョロ…
ホテルマンさんは一礼して後にした
ピツ
ピピピピッ、ピピピピッ
ディスプレイを見たら37.8度だった
私は食べれると絃歩くんが言うのでベッドに座らせた
トクトクトクトク…
絃歩くんは喉が乾いていたのか、全て飲みきった
俺はブレスレットのことを思い出した
今日渡さなきゃ
ひやっ
私は絃歩くんが寝たのを確認して荷物をまとめるのを始めた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。