第59話
全国ライブツアー③
まだライブまで2時間くらいあるしゆっくりしていたら
後ろから肩をトントンと叩かれた
そー言って絃歩くんは私の手を取って歩いた
そう言い残し楽屋を後にした
なんとなく嬉しそうな彼女に心もほっとした
外への入り口の近くはいっぱい自販機あったし、そっちに行こうかな
長い廊下を歩く
エレベーターもあったけど、歩きたくて階段にしてもらった
そういうと俺は繋いでた手を恋人つなぎに変えた
ギュッ
彼女も握り返してくれた
絡み合う指から安心を感じる
日が照ってるとはいえ、初秋
ちょっと風が冷たい
俺は着ていたカーディガンを彼女に掛けた
トコトコトコトコ
ガランガランッ
そう言うと絃歩くんはまた恋人つなぎをしてくれて歩いた
トコトコトコトコ
何もないけど歩いているだけでなんか楽しかった
人は居ない、たった2人きりの空間
外でこんなことはないから嬉しい
歩いていると芝生の所に小さなベンチがあった
俺は彼女の手を引いてベンチに向かった
ストンッ
確かに夕方ってこともあって風が冷たい
俺は周りに人が居ないことを確認してそっと抱きしめた
ギュウッ
俺はなるべく暖かくなるようにさすったりした
やけに素直な彼女は俺の言うことをすんなりと受け入れた
いつもは外だとあまりしないのに
俺は横抱きにして包み込むように抱きしめた
最近ずっとまともにイチャイチャしてない
周りを見ても誰もいなかった
俺は彼女の目を見つめ伝わるか試した
ジーッ
彼女は周りを確認して確信したのか
俺の気持ちを理解するかのように首に手を回した
そう言うと彼女は目を瞑った
それを見て彼女を抱き寄せ、後頭部に手を回しそっとキスをした
何度も何度も角度を変えては唇を重ねた
ちょっと噛み付くように
気持ちは多分一緒なはず
俺が舌を入れようとすると彼女はちょっと口を開けてくれた
いつの間にこんなこと出来るように…
絡まり合う舌が気持ちいい
久しぶりってこともあって止まりそうにない
俺はベンチに座らせ跨って、更にキスをしようとした
そのとき
キョロキョロ
うえを見ると他のメンバーが見ていた
俺はぱっと時計を見た
めっちゃ時間が経っていた
俺は耳元でコソッと囁いた
俺はまた彼女の手を引いて楽屋に戻った
彼女はバレたのにも関わらず満更でもない顔をしていた
俺は恥ずかしくて返事もせずただ手を引いて帰った