今から話すよ…

ありがとう恵、でも大丈夫。

うん。

ｽｩ…ﾊｧ…
（さて、何から話そうか…）
まずは生い立ちから話そうか。
実はね、私五条家の人間じゃないの。

私の本当の名前は、轟…轟あなた。
これが前の…昔の私の名前。

…おそらく、皆んなが想像してる通りだと思うけど、No.2プロヒーロー、フレイムヒーロー「エンデヴァー」
そいつの手によって作られた子供。
それが私。
奴にとって私は、“失敗作“でしか無かったんだよ。

…超常現象社会の2〜3世代の間で話題になった
『自分の個性をより強化して継がせる』
ためだけに結婚相手を選ぶ“個性婚”って知ってる？

父さんは…あいつは凄かった。充分って言って良いほど強かった。その力でNo.2まで上り詰めた。けど…それだけじゃ足りなかった。
No.1ヒーロー、オールマイトとの実力差を見せつけられ、打ちのめされたあいつは次の策に出た。

…さっき言った個性婚。
お金と実績を大胆に使って、あいつはお母さんと「無理矢理」結婚した。

そして、お母さんの個性を手に入れた。

私は、個性婚によって生まれた『失敗作』だった。

無個性の雑魚。要らない子。役立たず。失敗作。逆に、弟の焦凍はあいつにとって、最高傑作だった。

失敗作の私は、あいつから嫌な風に扱われた。
焦凍は…私よりかは、まだマシだったかな。
遊びも出来ない。兄弟と会うことすら許されない。ずっと殴られて、蹴られての繰り返し。
ただただ、強くなるように育てられた。

私の目、あいつと同じ色なの。
あいつと同じ青い眼。
醜い目の色なの。
記憶の中のお母さんはずっと泣いてる。
私と、焦凍の左側が醜いって。
お母さんは私と焦凍に煮湯を浴びせた。

その時に出来たのがこの傷。

焦凍を庇った時に出来た傷だよ。
焦凍にも顔に火傷の跡がある。

…その後、私はあいつから…いや、あの家から逃げた。
苦しんでるお母さんと焦凍を置いて。

その時のことを、今もずっと後悔してる。
あの時、私に力があれば…お母さんを守れるだけの個性と力があれば…お母さんも焦凍も傷つくことは無かったかも知れないって。

逃げてる途中で、もうダメかも…そう思ってた時に、兄さん（五条先生）に会ったの。

その後の事はあまり詳しくは覚えてない。
でも、その時思ってた事はこれで助かるんだって、そう思ってたんだと思う。
実際、こうして兄さんやたくさんの人たちに助けて貰ったから｡

その後、兄さんに特訓もしてもらった。
でも、あいつとは全然違うやり方で私がしんどいって言ったら辞めてくれたし、まだやれるって言ったら訓練に付き合ってくれた｡
私、逆らったらずっと殴ったり蹴られたりしてたからさ、兄さんのやり方を知って驚いた。
本来の特訓って、こんな感じなんだなって｡
凄く…嬉しかった。

その後かな…個性が出たのは。
事の発端は忘れちゃったんだけど、いつのまにか出るようになってて、個性ってこんな感じなんだなって、凄く驚いたのを覚えてる。
兄さんも本気で喜んでくれた。
それがすごく嬉しかったんだ。
私、あの家（轟家）で褒められた事、一回もなかったから。

その後に恵と会って、ずっと一緒に話したり遊んだり、時には喧嘩もして凄く楽しかった。
兄さんと同じ六眼と分かってからは、あんまり外に出る事は無かったけど、こっち側の世界に来てから、景色が変わったの。
今までモヤがかかってた景色が、一瞬で晴れたんだ。

感謝しても仕切れないくらい、凄く有難かったんだ。
こうして、ここに居させてもらえるだけで凄く暖かいし、元気になれる。
みんなに出会えて本当によかったって、今は思ってるよ。