時計を見たら夜中の3時。
すごすごとリビングに行くと彼は起きてた!
なんだよ、恋人が叫んでるのに、助けに来ないんかい?
手招きするからそばに行くと、
「あ、泣いてるー」
「びっくりしたんだもん」
「どしたの?」
「寝てたら握られたんだよ?」
「どこ?」
「こっ股間!」
「触らせたんだ」
あれ?
なんかおかしい。
やっぱり酔っ払ってる?
「オマエさぁ、オレが触りたいの我慢してんのに、他のヤツに触らせていいと思ってんのかよ?」
「え?
ちょ、待って?
俺、被害者よ?」
そこはかわいそうに、よしよし、じゃないの?
なんで握ったヤツがよしよしされて甘やかされてんの?
彼は荷物をゴソゴソと探り、ぴらん、と薄い何かを取り出した。
俺にもそれが何かもうわかる。
コンドーム!
「おしおき」
語尾にハートを付けて可愛く笑うから、ひどいよー、こわいよー、の感情に、エロいよー、可愛いよー、まで混じってわけがわからない。
「え、何すんの?
まさか?」
彼は黙って浴室からバスタオルを持ってきてソファに敷いた。
その上に俺を座らせ、自分は床に座って、俺のパジャマのズボンを下げ、驚いて縮んだ俺の分身を丁寧に可愛がり始めた。
良かった、そっちか。
襲われるのかと思った、って安心した途端、反応し始める俺。
彼はコンドームの封を切り、中身を取り出して口に含み、俺を挑発するように顔を見ながら、被せてきた。
うっわ、エロ。
この人なんでこんな事できんだろ?
今度はあっという間に装着できた。
指で撫でながら根元まで……ん?
なんで完全に被せないの?
途中で止まってるんだけど。
「あの、キツイんだけど」
「うん」
「それで合ってんの?」
「うん、おしおきだもん」
可愛く笑いながら俺にくっついて、耳元で、
「こうしとけば、簡単に射精できないと思うよ、ペニスリングの代わり」
って囁いて、あちこちにキスし始める。
まだ知らない事があるのか、奥が深い。
じゃなくって。
「オマエ、ほんとに可愛いなぁ」
愛撫しながらつぶやくから、だんだんたまらない気持ちになって、俺も彼にキスをする。
……酒くさっ。
この味苦手。
なのに、彼は時間をかけてたっぷりキスを楽しんでる。
だんだん頭がぼうっとなってきた。
「オマエ可愛い、めちゃくちゃ可愛い」
結局、手で口でさんざん愛されてから挿れて、でもいつもみたいにダイレクトには駆け上がれなくて、彼がイッてからもなかなかイけなかった。
結局最後はイッたけど、こんなに疲れたの初めてだ。
満足そうに眠る彼を起こさないように腕を外して、コンドームの処理をする。
うん、確かに処理はラクかもね。
ただし、正しく装着すれば、の話。
時計を見たら5時近かった。
彼を抱いて狭いソファで、泥のように眠る。
一方、ベッドのふたり。
キラキラが出て行ったのを確認すると、わくわくした声で、
「さ、始めましょ?」
「何を?」
「何、って、何言ってるんです?
殿始めに決まってるじゃないですか。
元旦に、愛し合ってる恋人が、他に何するんですか?」
「おま、もしや?」
にたり。
「ワザとに決まってるでしょ。
ああすれば騒ぐと思って。
僕が、いくら酔ってたって、あなたと他の誰かを間違えるわけないじゃないですか。
肌の匂いが全然違うのに」
「……直に握ったんか?」
「んなわけないでしょ、気持ち悪い。
服の上からに決まってるでしょ。
さ、おしゃべりはやめて、キスしてください」
唇を合わせる前に、
「今夜は寝かせませんからね」
体を寄せて、欲望の昂りを示すのを忘れない。
翌日11時。
チェックアウトする時、何故かボロボロの高身長ふたり。
「もうあかん、丸いちんち眠れるわ」
「俺も。
酔っ払いのキスで二日酔いになって、頭痛い」
びっくりする金額をキャッシュで払ったが、疲労し過ぎて、寝ること以外考えられないふたりだった。
かたや離れたところで、きゃっきゃと元気いっぱいのダンサーふたり。
「あー、ほんと楽しかったー」
「ホントですねー、僕もほんとに満足できました。
朝ごはんも美味しかったー」
「ちなみに、何回シたの?」
「ふふっ、3回。
そっちは?」
「イカせなかった。
勃たせっぱなし」
「えー、鬼畜ー」
「オマエに言われたくないよ」
笑顔いっぱいだった。
〈〈終わり〉〉
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。