第11話

New Year's Eve ⑤
98
2021/05/19 04:50





時計を見たら夜中の3時。

すごすごとリビングに行くと彼は起きてた!

なんだよ、恋人が叫んでるのに、助けに来ないんかい?

手招きするからそばに行くと、


「あ、泣いてるー」


「びっくりしたんだもん」


「どしたの?」


「寝てたら握られたんだよ?」


「どこ?」


「こっ股間!」


「触らせたんだ」


あれ?
なんかおかしい。
やっぱり酔っ払ってる?


「オマエさぁ、オレが触りたいの我慢してんのに、他のヤツに触らせていいと思ってんのかよ?」


「え? 
ちょ、待って?
俺、被害者よ?」


そこはかわいそうに、よしよし、じゃないの?
なんで握ったヤツがよしよしされて甘やかされてんの?

彼は荷物をゴソゴソと探り、ぴらん、と薄い何かを取り出した。

俺にもそれが何かもうわかる。
コンドーム!


「おしおき」


語尾にハートを付けて可愛く笑うから、ひどいよー、こわいよー、の感情に、エロいよー、可愛いよー、まで混じってわけがわからない。


「え、何すんの?
まさか?」


彼は黙って浴室からバスタオルを持ってきてソファに敷いた。
その上に俺を座らせ、自分は床に座って、俺のパジャマのズボンを下げ、驚いて縮んだ俺の分身を丁寧に可愛がり始めた。


良かった、そっちか。


襲われるのかと思った、って安心した途端、反応し始める俺。

彼はコンドームの封を切り、中身を取り出して口に含み、俺を挑発するように顔を見ながら、被せてきた。

うっわ、エロ。
この人なんでこんな事できんだろ?

今度はあっという間に装着できた。
指で撫でながら根元まで……ん?
なんで完全に被せないの?
途中で止まってるんだけど。


「あの、キツイんだけど」


「うん」


「それで合ってんの?」


「うん、おしおきだもん」


可愛く笑いながら俺にくっついて、耳元で、


「こうしとけば、簡単に射精できないと思うよ、ペニスリングの代わり」


って囁いて、あちこちにキスし始める。
まだ知らない事があるのか、奥が深い。
じゃなくって。


「オマエ、ほんとに可愛いなぁ」


愛撫しながらつぶやくから、だんだんたまらない気持ちになって、俺も彼にキスをする。


……酒くさっ。


この味苦手。
なのに、彼は時間をかけてたっぷりキスを楽しんでる。
だんだん頭がぼうっとなってきた。


「オマエ可愛い、めちゃくちゃ可愛い」


結局、手で口でさんざん愛されてから挿れて、でもいつもみたいにダイレクトには駆け上がれなくて、彼がイッてからもなかなかイけなかった。
結局最後はイッたけど、こんなに疲れたの初めてだ。

満足そうに眠る彼を起こさないように腕を外して、コンドームの処理をする。

うん、確かに処理はラクかもね。
ただし、正しく装着すれば、の話。


時計を見たら5時近かった。
彼を抱いて狭いソファで、泥のように眠る。






一方、ベッドのふたり。


キラキラが出て行ったのを確認すると、わくわくした声で、


「さ、始めましょ?」


「何を?」


「何、って、何言ってるんです?
殿始めに決まってるじゃないですか。
元旦に、愛し合ってる恋人が、他に何するんですか?」


「おま、もしや?」


にたり。


「ワザとに決まってるでしょ。
ああすれば騒ぐと思って。
僕が、いくら酔ってたって、あなたと他の誰かを間違えるわけないじゃないですか。
肌の匂いが全然違うのに」


「……直に握ったんか?」


「んなわけないでしょ、気持ち悪い。
服の上からに決まってるでしょ。
さ、おしゃべりはやめて、キスしてください」


唇を合わせる前に、


「今夜は寝かせませんからね」


体を寄せて、欲望の昂りを示すのを忘れない。





翌日11時。
チェックアウトする時、何故かボロボロの高身長ふたり。


「もうあかん、丸いちんち眠れるわ」


「俺も。
酔っ払いのキスで二日酔いになって、頭痛い」


びっくりする金額をキャッシュで払ったが、疲労し過ぎて、寝ること以外考えられないふたりだった。




かたや離れたところで、きゃっきゃと元気いっぱいのダンサーふたり。


「あー、ほんと楽しかったー」


「ホントですねー、僕もほんとに満足できました。
朝ごはんも美味しかったー」


「ちなみに、何回シたの?」


「ふふっ、3回。
そっちは?」


「イカせなかった。
勃たせっぱなし」


「えー、鬼畜ー」


「オマエに言われたくないよ」


笑顔いっぱいだった。







〈〈終わり〉〉



プリ小説オーディオドラマ